ギターエフェクターで使える!アナログ回路

エフェクトはeffectで効果という意味だ。だからエフェクター効果というのは効果の効果ということでおかしな日本語になる。他にもAM変調とつい言ってしまう。AMとAmprifier Modulationのこと。つまりは増幅変調の変調ってこでなんのこっちゃわからない。

そんなことはさておき、今回の記事はギターエフェクター製作というより、ギターエフェクターでよく使うオペアンプの実例回路を紹介する内容になっている。

いろいろなエフェクター回路を参考にしているうちに、自分んは音色変化の楽しさよりも電子回路の動作に興味を持ってしまった。かなりマニアックな内容となるが、忘備録として覚えた回路を残したのでお付き合い願いたい。



バッファ回路


ギターやベースなどのピックアップは出力インピーダンスが高いため、電圧は取り出せても電流を取り出せない。だからピックアップの出力を受け取ってエフェクト処理するためには、入力インピーダンスが十分に高いバッファ回路をはさむ必要がある。
次の回路はどちらとも電圧に対しての増幅はほぼ0dBであるが、出力インピーダンスを十分に下げる効果がある。つまりこれは電流増幅回路とも言える。




FETは2SK30Aの他に2SK303や2SK369が代替可能だが、FETの端子は統一されていないので注意が必要だ。どのFETもTO-92パッケージだが表のように端子の割り当てはどれも違っている。



FET 端子(1、2、3の順)
2SK30A S G D
2SK303 G S D
2SK369 D G S



非反転増幅回路




位相は変えずに信号レベルを増幅する回路。
上図の場合の増幅率は、

$$ A = \frac{Rs + Rf} {Rs} $$

より、11倍の増幅率となる。


位相反転回路(インバーター)




信号レベルは変えず、位相だけを反転させる回路。Rs=Rfに設定し、Rcをその半分の値にする。



振幅変調の仕組み(トレモロエフェクター )


振幅変調はAmplitude Modulationと言われる様にAMラジオなどで用いられている仕組みだ。搬送波を低周波で変調させている。
ギターエフェクターなどで使われるトレモロもいわゆる振幅変調だ。この場合はギターの音量を低周波で上げたり下げたりすることで実現させている。
今回はギターエフェクターでも使えるトレモロ回路の実験を行っていく。

ではトレモロ回路はどの様にして実現できるだろうか?
実はとても簡単で、基本はオペアンプの非反転増幅回路によって実現できる。
下の回路図において、増幅率AはRfとRsで決まる。このとき何らかの信号でRsの抵抗値を変化させることができれば、増幅率Aも変化することになるはずだ。



RsがRfより小さければ増幅率Aは大きくなり、RsがRfより大きければ増幅率Aは小さくなる。
そして信号よって抵抗値を変化させることができる素子がフォトカプラである。

フォトカプラの中身は単純でLEDと光センサーであるCdSが向かい合ってパッケージされたものである。LEDを明るくすればCdSの抵抗値は下がり(数100Ω〜数kΩ)、また逆にLEDを暗くすればCdSの抵抗値は上がることになる(数十MΩ)。
ところでLEDの明るさは流す電流によって決まってくる。たくさん電流を流せばLEDは明るくなり、少ない電流ならば暗く点灯する。LFOは電圧変化なのでLEDを制御するには電流変化に直さなければならない。そのままのLFOの信号をフォトカプラへ流すわけにはいかないのだ。このことに関してはまた後ほど説明する。


反転増幅によるトレモロ回路


振幅変調の仕組みのとおり、LFOで音源を増幅制御すればトレモロ効果が得られるはずだ。
増幅方法だが、非反転増幅回路を採用すると通常1倍以上の増幅からの変化になってしまう。そこで反転増幅回路を利用した0〜1倍の間で音量を変化させる回路を考えてみることにした。回路図のRfにはフォトカプラのCdSをつなぐことになる。Rfと並列につないでいる47kΩの抵抗が、最大の増幅率を決める要素となっている。



出力を正転にするために前段にはインバーターを設けている。


LEDドライバー


フォトカプラ内のLEDを点灯させるためのドライバー回路だ。



この回路は電流制御を電圧信号で行うことができる回路といってよい。AnodeとGND間にLEDを接続する。ただし注意としてLEDと直列に1kΩくらいの抵抗を入れるのを忘れずに。そうしないとLEDが壊れてしまう。
また上の回路ではバイアス電圧を可変抵抗で調整できる様にしている。バイアス電位を変えることで、LEDの明るさの中心点を変更することができるのだ。


LFO回路




バイアス回路





ローパスフィルター




この回路は2次のローパスフィルター(LPF)で、-12dB/octで減衰する。カットオフ周波数は200kHz程度まで可能だ。コンデンサの0.02μと0.01μがペアになっていて、二倍の関係になるように調節することでその中間値の0.015μFが理論上のCとなる。私は可変抵抗を2連の50kΩにして組んだ。

$$ fc = \frac{1} {2πCR} $$

入力カップリングコンデンサの後の100Ω抵抗は動作安定のため。これを入れないと、可変抵抗が0Ω近くになるときにノイズというか、ガリが発生してしまう。


クリッピング回路





絶対値回路


理想ダイオードを利用した全波整流回路で、絶対値回路という。
単一電源の場合ではバイアス回路は設けず、GNDを基準にすること。
なお入力と出力のカップリングコンデンサは省略している。



波形をみてもわかるが周波数が2倍になっている。ギターエフェクトに使うとオクターバーのような効果になって面白い。この回路はもともと歪系エフェクターに使われておりトランジスタで組み立てられていたのだが、それをオペアンプでやってみたところ同じような効果が得られた。
トランジスタでやる場合は次のようになる。



前段のトランジスタはそのままの信号と位相が反転した信号を同時に作り出すC-E分割回路。その後の二つのペアになった差動回路を通ると周波数が2倍になって出てくる。

歪みを作る場合、奇数倍音と偶数倍音が音色を特徴付ける重要な要素となるようだ。
ゲインを単純に増幅しただけだと矩形波になってしまい、つまりこれは奇数倍音で構成されることになる。一方で偶数倍音を発生させたい場合はこのような回路で強制的に偶数倍音を作り出し、その後クリッピングすることになる。



ミキサー回路




フェイザー回路




自作4連フォトカプラー


フェイザーエフェクターの回路をみると4つのフェイザー回路を使って位相を360°変化させている。このためフォトカプラーを4つ使うことになるのだが、ふと面白いアイデアを思いついた。

ひとつのLEDで4つのCdSを制御するフォトカプラを作れないだろうか?

早速やってみることに。回路は次の様になる。



LEDは光分散のためスモークタイプの3mm赤色LED 70°を使った。CdSは1MタイプのCdSセル(1MΩ)GL5528を使った。


4つのCdSを向かい合わせて並べ、その中心にLEDを配置して半田付けをする。LEDには保護抵抗100Ωを付けている。抵抗なしでLEDをうっかり点灯させてしまうと壊れる可能性があるからだ。(実際すでに自作フォトカプラーを壊してしまった。)



CdSは少しの光でも反応するので外部の光をきっちり遮断することが大切だ。LEDとCdSの間に少し空間を残し、黒のホットボンドでパッケージ化した。



4連のフォトカプラーの出来上がりだ。

ところでフォトカプラーは英語でPhotocouplerである。couplerはcoupleの「対」という意味で、LEDと光センサーが対になっているからだろう。

そこでこの4連のフォトカプラーを「Photoquadrupler(フォトクアッドルプラー)」と命名することにする。(couple → tripple → quadrupleより。)


Photoquadruplerの性能測定


フォトクアッドルプラーの出力抵抗値を測定してみた。
ただし先ほど制作したLEDドライバーでLEDを点灯させている。また、LEDは1kΩの抵抗を挟んでいる。

測定結果はこちら。1.5VあたりからLEDが点灯している。



グラフに表すと次の様になる。



各CdSの出力にばらつきはあるが、エフェクター 用途ではこの性能で十分だった。
4V以降は電圧を上げても抵抗値があまり変わらないので、1.8Vから4Vの範囲で入力電圧を設計するのが良さそうだ。そのとき抵抗値は1kΩ〜2kΩから20kΩ〜40kΩの変化となる。




アナログ開発環境のアイデア


怠け者な私?は共通部分の回路を使いまわせないだろうかと考た。エフェクター回路に触れてみれば分かると思うが、バッファや増幅回路、クリッピングやミキサーなど共通の回路が結構多いものである。
プログラミングだったら関数やクラス化するように、電子回路でも使いまわせる単位に出来るのではないだろうかと。そこで写真の様に使いまわせそうな回路を小さな単位でモジュール化してみることにした。



モジュールの入れ替えを可能にするため、ピンの配線はできるだけ統一することにした。この様に小さな単位にすることは入れ替え可能の便利さだけでなく、何か不具合があっても原因を見つけ易いというメリットがある。

配線方法はちょっと変わっているかもしれない。エッチングでプリント基板を製作し、ランド法による半田付けを採用した。



怠け者な私にとってピンバイスでの穴あけ作業はとても億劫な作業だ。ところがランド法なら穴あけ作業を省くことができる。また配線図も上からみてわかりやすいメリットがある。さらに裏面はキレイな平らになるので、そこへシールを貼り付けコメントを書き込むことができるのだ。

しかしこの方法だと強度に不安が残る。モジュールをそのまま過酷な現場のエフェクターに実装するには危険だろう。足で力任せに踏みつけられるエフェクター達。あくまで実験ボード上での使用をお勧めする。




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