ST-14でパッシブDIの製作・自作ダイレクトボックス【エフェクタ製作】

今回の記事では、山水のトランスST-14をつかった自作のパッシブDIを紹介をする。ご覧の通り、かなりコンパクト。しかも無電源で動作する。DIがあるとないとでは大違い!?記事の最後では、DIあり・なしでのギターベースの音質比較も行ったのでぜひ参考に!

ST-14を使った自作パッシブDI
ST-14を使った自作パッシブDI

DIとは?

DIとはダイレクトインジェクションの略。

ハイインピーダンスの信号をローインピーダンスに変換する役割がある。

ギターやベースなどのピックアップは数百MΩのハイインピーダンスなので、そのまま機材へ入力してしまうと、音が劣化してしまう。そこでDIの登場だ。

たとえばエフェクト処理をパソコンのソフトでやりたい場合に、生音で録音するといったケースはあるだろう。オーディオインターフェイスがハイインピーダンスの受けに対応していればよいが、そうでない場合がある。そこでDIを通してローインピーダンスの信号に変換してあげる。すると、どんな機材でも本来の楽器の音が録音できるのだ。

ライブハウスなどのPA卓も普通、ギターやベースの音を直接受けられるようなハイインピーダンスの入力には対応していないから、楽器のライン入力を受ける場合はDIをかましている。

もちろんアクティブ回路を内蔵しているギターや、エフェクターをはさむ場合は、ギターのピックアップよりは十分低いインピーダンスで出力されるので、直受けでも良いのかもしれない。

DIを使うメリットは他にもある。ギターなどのアンバランスをバランス変換して伝送できるのだ。ライブハウスなどではステージからPA卓までの距離が長いため、途中でノイズが乗ってしまうリスクが高まる。そこで信号を長距離送る前にバランス変換してあげることで、ノイズに強い伝送を送ることが可能となる。

そもそもバランス伝送って?

HOTとCOLDの信号
HOTとCOLDの信号

バランス伝送の簡単な仕組みを説明したいと思う。

バランス伝送では3つの線で信号を送ることになる。1つは送りたい信号、もう1つはGND(アース)で、最後の1つは送りたい信号と位相を180度ずらした逆相の信号である。

HOT: 送りたい信号
COLD: 送りたい信号を逆相にした信号
GND: アース
  • 信号を受ける側の機材では、COLDの信号を180度にずらしてHOT信号と同じ形にもどす。
  • その後、HOTとCOLDを足し合わせて入力信号とする。

HOTとCOLDから2倍の信号電圧
HOTとCOLDから2倍の信号電圧

だから実際には、図のようにHOTの2倍の電圧が入力信号になる。

バランス伝送(平衡信号)がなぜノイズに強いのか

ではなぜこの信号がノイズに強いのだろうか?

伝送の途中で信号になんらかのノイズが乗ってしまったとしよう。外部からのノイズはHOTとCOLDとも位相は同じになる。

HOTとCOLDのノイズは同相
HOTとCOLDのノイズは同相

しかしバランス信号を受ける側の機材ではCOLDを逆相にして、HOTとCOLDを足し合わるのだった。だから、COLDのノイズは位相を反転して、HOT側のノイズと足し合わせることになり、見ごと相殺されて消えてしまう。つまり元の信号の2倍のキレイな信号だけを伝送できるのだ。

ノイズの相殺
ノイズの相殺

これが、バランス伝送がノイズに強い理由である。

ダイレクトボックス自作への道

ここまでで、ダイレクトボックスのさまざまなメリットをお分かりいただけただろう。

巷で有名なのはカントリーマンや、BOSSのダイレクトボックスあたり。スタジオやライブハウスでよく見かけるDIだ。

ただしこれらのDIは結構な値段がする。そこで今回は山水のST-14を使ってパッシブDIを製作してみた。材料費すべて合わせても、3000円程度で製作できた。

最近は格安なダイレクトボックスも売っているようなので、自作するほうが逆に値段が高くつくかもしれない。電子工作が趣味でどうしても作りたい人以外は、素直に製品を買われることをオススメしておく。

パッシブDIの製作

DIの製作にあたって、使用したトランスはサンスイのST-14だ。

ST-14インピーダンス

ST-14のインピーダンスは次の通り。

1次2次
500kΩ1kΩ

巻数比 22.4:1

参考

パッシブDIの回路図

回路図は次の通り。無電源でできる非常に簡単な回路だが、配線間違いしやすいので気をつけたい。

パッシブDIの回路図
パッシブDIの回路図

バランスアウトにキャノンコネクタ(XLR)を使う場合は、次のように置き換えることができる。

UnbalanceTRSXLR
HOTTip2番
COLDRing3番
GNDSleeve1番

今回の自作DIでは、市販のDIにあるような、アンバランスアウトやGNDオープンなどの機能は実装せず、インピーダンス変換のみとなっている。そのかわり、製品では売っていないほどの小型のダイレクトボックスを作ることができた。

ダイレクトボックスの製作過程
ダイレクトボックスの製作過程

自作ダイレクトボックスの内部
自作ダイレクトボックスの内部

DIによる音色の比較

それでは制作した自作パッシブDIを使って音の違いを確かめてみたいと思う。

録音機材

今回使用した録音機材は、ZOOM H5となる。このハンディタイプの録音機材は、オーディオインターフェイスとしても使えるので便利だ。説明書を読むと、入力のXLR/TRSコンボジャックは、XLR:2番ホット、TRS:TIPホットとなっている。

さらに入力インピーダンスは1.8kΩ以上となっていて、ギターなどのハイインピーダンスの楽器の直接の入力には使えない。そこでDIの出番だ。

音色の比較

実際にDI有り無しのときで録音してみたのでご覧いただきたい。ギターもベースもボリューム、トーンともにフルテンで録音している。

動画をみてもらえればわかる通り、DIを通して機材へ入力したほうが、高音が劣化せずドンシャリな音になっていると思う。一方でDIがないと、こもったような音になってしまう。そもそもDIがないと、トーンコントロールすら効かない状態。これでは細かな音色作りができなくなってしまう。

逆に言えば、DIを使わず録音機材へ直挿しでトーンコントロールが効くようならば、DIは必要とないとも言える。

ダイレクトボックスはエフェクターに比べて音色変化が地味なので、自作する人は少ないかもしれない。しかし音響で扱う電気信号の基礎的な知識がいろいろ身につくので、いずれ自分でエフェクターなどの回路設計をしてみたい方は制作してみることをオススメする。

パッシブDIならばトランスだけで作ることができるので、初心者でも簡単に作ることができるだろう。

Re:AMP

DIがあれば逆DIもある?録音した音源をライン出力でエフェクターに繋ぎたい場合、Re:AMPがあると便利だ。Re:AMPは、ローインピーダンスをハイインピーダンスへ変換するもので、まさに逆DIだ。ライン出力がギターに似た出力に化け、エフェクターがキレイにかかるようになる。詳細はこちらの記事で。

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▼ フットスイッチは一番負荷がかかる部品です。少し高くても、長く使いたいなら頑丈なものを選びましょう。

▼ ギターシールドなどに使うケーブルは、CANAREがオススメです。耐久性が良く、長持ちします。値段もお手頃価格です。

オススメの自作エフェクタ本

エフェクターの電子工作でオススメな書籍を紹介します。どちらの書籍も大塚明先生が書いたもので大変良書だと思います。残念ながら現在廃盤になってしまい品切れまたは高価格になっている可能性が高いですが、もし安く手に入るようなら買っておいて損はないです!

  • 専門的知識がない方でも、文章が読みやすくおもしろい
  • エレキギターとエフェクターの歴史に詳しくなれる
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こちらは別の方が書いた本ですが、写真や図が多く初心者の方でも安心して自作エフェクターが作れる内容となってます。実際に製作する時の、ちょっとした工夫もたくさん詰まっているので大変参考になりました。

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