もっとも簡単なFETバッファ回路〜自作エフェクタで使える!
こんなことやります
- FET1石でバッファ回路をつくる
- インピーダンスを計算する
この記事では、「1石FETのバッファ回路」をご紹介します。ギターやベースなどの出力を直接受け取ることができるので、自作エフェクタなどにも応用できます。ぜひご参考になさってみてください。
また、2SC1815などによるバイポーラトランジスタのバッファ回路や、オペアンプによるバッファ回路もございます。こちらの記事をご参考になさってみてください。
つかうもの
今回は2SK303を使用しましたが、小信号用のFETでしたら他のものでも代用可能です。自作エフェクタの世界では、2SK30Aなどがよく使われてますね。
ただしFETの場合、端子の配列が統一されてませんので型番によってバラバラです。
参考に、私がよく使うFETの端子配列をのせておきます。
FET | 端子(1、2、3の順) |
---|---|
2SK30A | S G D |
2SK303 | G S D |
2SK369 | D G S |
エフェクタ回路で使う場合、性能的には2SK303や2SK369は2SK30Aと代替が可能です。詳しくはこちらをご覧ください。
もっとも簡単なFETバッファ回路図
こちらが「もっとも簡単なFETバッファ」の回路図になります。
FETを使って簡単に、しかも安く作れる回路です。オペアンプなんかよりも消費電流はとても少なくて済む回路でもあります。
こちらのバイポーラトランジスタ版も、同様にシンプルなバッファ回路になってます。
ざっくりとした性能
「もっとも簡単なFETバッファ回路」のざっくりした性能をご紹介します。
項目 | 値 |
---|---|
入力インピーダンス | 1MΩ |
出力インピーダンス | 800Ω |
最大入力信号 | 1Vpp以下 |
消費電流 | 0.2mA |
インピーダンスの測り方は、後ほど解説します。入力インピーダンスは1MΩと十分に高いので、ギターなどのハイインピーダンスなピックアップ出力を受け取ることができます。実際このバッファ回路は、さまざまなエフェクタ回路の入力に使われているのを拝見できます。
最大入力信号は、1Vpp以下で使います。詳しくは記事の後半で解説します。
さて、消費電流はわずか0.2mAです。つまりは、006Pの9V電池を500mAhとすれば、なんと2500時間も稼働できる計算になります。
一方で、オペアンプによるバッファ回路では、10mAもの電流を消費してしまいます。FETのバッファ回路はだいぶエコになっています。ただし、オペアンプのバッファ回路は、音質的な性能が格段に良いメリットがあります。
FETのインピーダンスの測定方法
ここでは、FETのインピーダンスの測定方法を解説します。
入力インピーダンスの測定
バイポーラトランジスタとちがって、FETのゲートにはほとんど電流が流れません。つまり、FET自体の入力インピーダンスは無限大といえます。そこで、先ほどの回路を見ますと、入力前には1MΩの抵抗が繋がっています。つまり、このバッファ回路の入力インピーダンスはこの抵抗の値そのものになり、1MΩとできます。
出力インピーダンスの測定
FETの出力インピーダンスは、バイポーラトランジスタのエミッタフォロワやオペアンプのようには低くはならないようです。
実際に実験してみたところ、この回路では出力先機材の入力インピーダンスが10kΩ以上でないと、波形が歪んでしまいました。
さて、出力インピーダンスの測定方法は次のとおりです。
- バッファ回路の出力に可変抵抗で負荷をかける
- 1kHz、500mVppの正弦波をバッファ回路へ入力し、出力が入力信号の1/2になるように可変抵抗を調整する
- その時の負荷の値\(R_L\)をテスターで測定する
\(R_L\)の値を元に、分圧法でFETの出力インピーダンスをざっくり計算できます。
$$\frac{R_L}{Z+R_L}=\frac{1}{2}$$
より、
$$Z=R_L$$
です。つまり、測定した\(R_L\)をそのまま出力インピーダンスとできます。
測定したところ、出力インピーダンスは800Ωとなりました。この方法ではあまり正確な出力インピーダンスを測定できませんが、エフェクタ回路の場合なら十分な参考になると思います。
発振器のすすめ
ところで、こういった低周波の実験には「発振器」があると便利です。発振器は「ファンクションジェネレータ」や「オシレーター」とも呼ばれます。ご参考になさってみてください。
▼ ファンクションジェネレータは自作することも可能です。
オシロスコープで波形を観察してみた
オシロスコープで波形を観察してみた。こちらは、500mVppの正弦波を、FETバッファ回路へ入力した時の出力のようすです。
上の波形が入力、下が出力となります。20kHz、1kHz、10kHzのすべてで歪みなくキレイに入力信号を出力できていますね。ギターやベースの出力信号は20Hzから6kHzあたりまでですから、その範囲で使うバッファ回路としては十分でしょう。
入力信号の大きさに気をつけよう
ただし、注意しておきたいことが一点あります。それは、入力信号が1Vpp以上だと波形が歪んでしまうことです。下の写真のように、1Vpp以上の信号を入れると、マイナス側がクリップされてしまいました。
さきほどの回路図を見ると、FETのゲートの1MΩがGNDに接地されています。本来なら、バイアス電位につなぐのが丁寧なやり方です。これだと、プラス側の入力電圧しか通せないので、マイナス側がクリップするのは当然なのです。
しかし、逆に言えば1Vpp以下の小信号ならば波形は歪まないということです。ギターやベースなどの出力は1Vpp以下(大きくても500mVppほど)ですから、ピックアップ出力を受け取るバッファ回路としては問題なさそうです。それに積極的に音を加工するエフェクターに使うなら、多少のクリップについて神経質にならなくても大丈夫そうです。
以上の点を踏まえて、このFETバッファ回路をご活用いただければと思います。
エフェクタ製作に必要なオススメの工具をご紹介します。
▼ ミュージシャンの方にお勧めされた白光のはんだごてを使ってます。少し高いと思われるかもしれませんが、もっと早く買っておけば良かったと思えるほど良いです。立ち上がりが早くてはんだごてのオンオフのストレスがなくなり、温度も熱くなりすぎないのでパーツを痛めることも少なくなりました。これ一本で基板のはんだ付けから、ジャックなど大きめのパーツもはんだ付けできます♪
▼ はんだで音が変わると言われるほどですので、ヴィンテージはんだから色々こだわる方もいらっしゃるかと思います。私はまだ研究しきれてませんので、とりあえず楽器、エフェクタのはんだ付けに定番のKESTER 44を使ってます。
▼ エフェクタケースはタカチかHAMMONDのケースになると思います。HAMMONDの方がエッジが立っていて、洗練されたデザインなので好きです(電波の発信源にはなりそうですが笑)。Amazonなんかで売られているのはHAMMONDの正規品ではなくクローンですが、使ってみて問題はない感じでした。
▼ ジャックやスイッチは故障しやすいので、少し高くてもそれなりのものを使ったほうが良いです。私が最近よく使っているのは、NEUTRIKのNMJ6HC-S、SWITCH CRAFTの12Aと12Bです。NMJ6HC-Sはサウンドハウスさんで安く手に入ります。12Aはプラグを抜くとスイッチがショートするタイプで、入力に使うと便利です。12Bはステレオなので電源スイッチと連動できます。
トゥルーバイパスでエフェクタ制作する場合は、フットスイッチをよく選んだ方が良いです。安物だとスイッチノイズが盛大にでます。どこのメーカーかは分からないのですが、端子が金メッキされているフットスイッチを選ぶとしっかりした作りなので安心できます。
エフェクターの電子工作でオススメな書籍を紹介します。どちらの書籍も大塚明先生が書いたもので大変良書だと思います。残念ながら現在廃盤になってしまい品切れまたは高価格になっている可能性が高いですが、もし安く手に入るようなら買っておいて損はないです!
- 専門的知識がない方でも、文章が読みやすくおもしろい
- エレキギターとエフェクターの歴史に詳しくなれる
- 疑問だった電子部品の役割がわかってスッキリする
他にも自作エフェクターで参考になりそうなこれらの書籍を紹介しておきます。