もっとも簡単なFET1石バッファー回路〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その4

もっとも簡単なFET1石バッファー回路〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その4
もっとも簡単なFET1石バッファー回路〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その4

FETたったの1石で作れるギター用のバッファーエフェクターをご紹介いたします。もちろんベースでも使えます。部品数も少なく低予算で作れます。音質もナチュラルで、無駄な色付けはありません。オペアンプのバッファよりも低ノイズです。

▼ この記事で制作したFETバッファーを販売中です!

▼ サウンドはこちらのYouTube動画をご参考ください。

\バイポーラトランジスタ版も解説してます/

もっとも簡単なFET1石バッファー

回路図

もっとも簡単なFET1石バッファーの回路図がこちら。部品数は合計でたったの5つです。簡単すぎて心配になりそうですが、さまざまなエフェクターでこの回路が実際に使われてます。十分実用的な回路ですので、安心してもらって大丈夫です。

もっとも簡単なFET1石バッファーの回路図
もっとも簡単なFET1石バッファーの回路図

ここではFETに2SK303を使用しましたが、 2SK30A や2SK369などでも代用可能です。ただしFETの場合、端子の順番が統一されてませんのでご注意ください。参考に、私がよく使うFETの端子配列をのせておきます。

FET端子(1、2、3の順)
2SK30AS G D
2SK303G S D
2SK369D G S

入力インピーダンス

FETはゲートにほとんど電流を流さないので、ゲートの入力抵抗は無限大と考えられます。よって、回路図中の1MΩの抵抗がそのまま入力インピーダンスとして考えられます。ギターやベースのピックアップ出力インピーダンスは200kΩ〜くらいですから、信号を劣化させずに直接受けることができます。実際は入力インピーダンスを500kΩで設計することが多いです。ハイあがりになりすぎるのを抑え、ノイズ耐性も強くなるからです。ここら辺はお好みで、音色を確認しながら入力抵抗を決めると良いでしょう。

出力インピーダンス

一方で、出力インピーダンスを知るには一筋縄ではいきません。簡易的ですが、負荷抵抗による分圧方で テスターDM6000AR を使って算出してみました。

  1. バッファーの出力に可変抵抗で負荷をかける
  2. 1kHz、1Vp-pの正弦波をバッファー回路へ入力し、出力が入力信号の1/2になるように可変抵抗を調整する
  3. その時の負荷の値\(R_L\)をテスターで測定する

この時\(R_L\)と出力インピーダンス\(Z\)は次の関係るはずです。

$$\frac{R_L}{Z+R_L}=\frac{1}{2}$$

より、

$$Z=R_L$$

です。測定したところ出力インピーダンスは800Ωでした(1kHz、1Vp-p)。

▼ より正確に出力インピーダンスを計算するには、相互コンダクタンス\(g_m\)が必要です。詳しくはこちら。

実際は出力先機材の入力インピーダンスが10kΩ以下だと波形が歪みます。ですから算出した値よりもっと出力インピーダンスは高いです。

最大入力電圧

ただし、注意しておきたいことが一点あります。それは、入力信号の電圧が2Vp-p以上だと波形が歪んでしまうことです。下の写真のように、2Vp-p以上の信号を入れると、マイナス側がクリップされてしまいました。ですから最大入力信号を2Vp-pとし、それ以下の信号電圧で使ってください。

2Vp-p以上の正弦波の観察
2Vp-p以上の正弦波の観察

ただし、ギターやベースのピックアップ出力は大きくても1Vp-p程度ですから、通常は問題ないはずです。下図は1Vp-pの正弦波を、FETバッファー回路へ入力した時の出力のようすです。上の波形が入力、下が出力となります。20kHz、1kHz、10kHzのすべてで歪みなくキレイに入力信号を出力できているのが分かります。

1Vp-pの正弦波の観察
1Vp-pの正弦波の観察

なぜ歪む?バイアス電位の関係

実はこの「もっとも簡単なFET1石バッファ」には、バイアス電位を考慮していません。FETのゲートの1MΩがGNDに接地されてますから、通常プラスに振れた電圧しか通さず、マイナス側がクリップするのは当たり前です。

もっとも簡単なFET1石バッファーの回路図
もっとも簡単なFET1石バッファーの回路図

逆に言えば1Vp-p以下の小信号ならば波形は歪まないということです。何度も言いますが、ギターやベースなどの出力は1Vp-p程度ですから、ピックアップ出力を受け取るバッファー回路としては問題ないです。

この歪み問題を改良したバージョンを記事の後半で解説してます。

消費電流

バッファーの電源をオンにし、無信号の時の消費電流を測定してみると0.2mAでした。リチウムイオンの9V電池を500mAhとすると、なんと!、2500時間も稼働できる計算になります。 オペアンプで作るバッファー回路 では、小さくても10mAくらいは電流を消費します。FET1石バッファーはだいぶエコな回路となります。

ここまでをまとめると、もっとも簡単なFET1石バッファーの性能は次のとおりです。

項目
入力インピーダンス1MΩ
出力インピーダンス800Ω
最大入力信号2Vp-p
消費電流0.2mA

FET1石バッファー改良版

FET1石バッファー改良版を少し真面目に作ってみました。ギターやベースなどのバッファーとして使える基板モジュールとして完成させました。バイアス電位を考慮し、低歪みなバッファーへと改造しました。部品などにもこだわって、高音質を維持しつつ低コスト化が実現できました。

  • ケースに収めてエフェクターとして使うも良し
  • ギターやベースへ内蔵してアクティブ回路化へ改造するのも良し

※売り切れの場合はリクエストください。 サイトに関するお問い合わせ

回路図

FET1石バッファー改(Simplest FET Buffer Version2.0)
FET1石バッファー改(Simplest FET Buffer Version2.0)

1Vp-p以上の信号でも歪まないように、バイアス電位を考慮した設計を行いました。回路図のR5とR6がバイアス電位を作る仕事をしてます。

モジュール基板と部品の特徴

▼ エフェクターケースに収めた完成版も販売中です!

回路図をもとにエッチングしたモジュール基板に部品をはんだ付けしました。使用したはんだは 「日本スペリア社 SN100C」の鉛フリー&銀フリーはんだ です。通常の鉛フリーよりも性能が優れており、音質的にも元気で好んで使ってます。

信号の通り道であるカップリングコンデンサC1とC2を性能の良い メタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサ で製作しました。出力段のカップリングコンデンサが少しでかいですが、電解コンデンサを使うより数倍性能は良好です。

FETに2SK303を使用、抵抗は1/2Wのカーボン抵抗を採用しました。抵抗もワット数が高いほうが音質が良いとされてます。コストを抑えつつ、出来るだけ品質・音質の良い部品を選びました。

さらに、オペアンプで作るバッファーに比べ超低ノイズなのも特徴です。FET1石というシンプルな回路だからこそ実現できる技になります。

基板サイズは約42mm x 27mmで、部品実装済みの高さが21mmほどになります。

入力インピーダンス

FET1石バッファー改(Simplest FET Buffer Version2.0)
FET1石バッファー改(Simplest FET Buffer Version2.0)

このバッファーの入力インピーダンスは500kΩです。R1とR2のそれぞれ1MΩを並列合成した値が、この回路の入力インピーダンスとなります。もしも入力インピーダンスを1MΩへ変更したければ、R1を取り除いてください。またはR1とR2をそれぞれ2MΩへ変更してもらっても構いません。 ギターやベースからのハイインピーダンスなPU信号を受け取れるのはもちろん、バイアス電位を設けたことで出力の大きい歪み系エフェクターの後などにもご使用いただけます。

出力インピーダンス

出力インピーダンスは800Ω程度と考えてください。出力先に繋ぐ負荷は10kΩを推奨です。波形を確認する限りでは1.8kΩの負荷でも、少し音量は下がるものの実用上問題なさそうです。出力のカットオフ周波数は、10kΩ機材に繋ぐことを想定して fc=7.2Hz で設計しました。

歪みの確認

1kHz、2Vp-pの正弦波をこのバッファーへ入力し、出力に負荷抵抗10kΩを繋いでオシロスコープで観察した様子を写真で示します。

1kHz、2Vp-pの正弦波、負荷抵抗10kΩ
1kHz、2Vp-pの正弦波、負荷抵抗10kΩ
9V電池で動かした場合で、4Vp-pくらいまでは歪みなく使えました。電源電圧を高くすれば、もっと高い電圧信号を扱えます。

消費電流

消費電流は2.3mA程度です。リチウムイオンの9V電池を500mAhとして計算すると、217時間ほど持つことになります。あくまでも理想ではありますが、オペアンプを使ったバッファー回路の消費電流が10mA以上と考えると、消費電流が少ないこともFET1石バッファーならではの利点といえます。

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エフェクタ製作に必要なオススメの工具をご紹介します。

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