ギターで使えるトランジスタ1石バッファ【エフェクタ製作】

今回は、バイポーラトランジスタ(BJT)1石で作れる最も簡単なギターベース用バッファ回路を紹介する。前回、もっとも簡単なFETバッファの紹介をしたが、もしかしたらその性能を上回るかもしれない。

エミッタフォロワ回路

エミッタフォロワ回路
エミッタフォロワ回路

トランジスタは一般にFETより入力インピーダンスが低いと言われるが、図に示すエミッタフォロワ回路であれば入力インピーダンスをかなり高くできることが分かった。ちなみにコレクタが電源に落とされているので、交流的にはコレクタが接地されているとみなすことができる。なのでエミッタフォロワ回路はコレクタ接地回路とも呼ばれる。

さて、この回路の入力インピーダンスと出力インピーダンスを計算したい。さまざまな書籍を漁ったが、エミッタ接地回路に関しては詳しく書いてあるものの、コレクタ接地回路に関してはあまり詳しく書かれていない。探し続けた結果、なんとWikipediaにその計算式が詳しく書かれていたのでそれを元に計算していく。

参考サイト

エミッタフォロワの入力インピーダンス

エミッタフォロワ回路
エミッタフォロワ回路

エミッタフォロワの入力インピーダンスは、次式で近似される。

$$Z_{IN} \approx βR_E \tag{1}$$

ただし次の条件を満たすこと。

$$(g_mR_E \gg 1) \land (β \gg 1) \tag{2}$$

βは交流信号における電流増幅値であるが、ここでは直流電流増幅値\(h_{fe}\)とほぼ同じと考えることにする。また、\(g_m\)とは相互コンダクタンス(ベースとエミッタ間の電圧変化に対するコレクタ電流変化の比)で次式で与えられる。

$$g_m=\frac{I_C}{V_T} \tag{3}$$

さらに\(V_T\)は熱電圧と呼ばれ、常温(27℃)では26mVであることが知られている。

$$V_T=\frac{KT}{q}=26[mV] \tag{4}$$

よって、

$$g_m=\frac{I_C}{26\times10^{-3}} \tag{5}$$

である。

エミッタフォロワの出力インピーダンス

エミッタフォロワ回路
エミッタフォロワ回路

エミッタフォロワの出力インピーダンスは、次式で近似される。

$$Z_{OUT} \approx \frac{1}{g_m} + \frac{R_{source}}{β} \tag{6}$$

ただし次の条件を満たすこと。

$$(β \gg 1) \land (Z_{IN} \gg R_{source}) \tag{7}$$

\(R_{source}\)とは、テブナン等価なソース抵抗で、つまりは信号源の出力インピーダンスと考えて良い。例えばギター(パッシブ)が信号源になるならば200kΩ〜500kΩである。

\(R_{source}\)が大きくコレクタ電流も大きい場合、\(\frac{1}{g_m}\)はほとんど無視できる大きさとなる。よって、式6を次のように簡略化できる。

$$Z_{OUT} \approx \frac{R_{source}}{β} \tag{8}$$

ギターで使えるトランジスタ1石バッファ回路

Simplest BJT Buffer Schematic
Simplest BJT Buffer Schematic

それでは、実際にギターで使えるトランジスタ1石バッファ回路を紹介する。こちらが今回作ったバッファ回路である。

トランジスタは2SC1815のBLランクのものを使用した。BLランクは\(h_{fe} (\approx β)\)が350〜700と高いため、今回の回路では入力インピーダンスを高くでき、そして出力インピーダンスを低くできることになる。

ちなみに、トランジスタの\(h_{fe}\)の測り方はこちらを参考に。テスタ1つあれば簡単に測ることができるので一度試してみよう。

最初からテスターに\(h_{fe}\)を測れる機能が付いているともっと便利。

こちらの商品はトランジスタ専用のテスター。ファミコンのようなデザインで可愛い。

さて、この回路の入力インピーダンスと出力インピーダンスを計算してみよう。先ほどの式1と式8をもう一度示す。

$$Z_{IN} \approx βR_E \tag{1}$$

$$Z_{OUT} \approx \frac{R_{source}}{β} \tag{8}$$

また、それぞれの値を次のように設定した。

項目
\(β\)600
\(R_E\)4.7kΩ
\(R_{source}\)220kΩ

βの値は、1MΩを介してベース電流を与えたときにコレクタ電流を実測して計算した値である。実際、\(h_{fe}\)は温度によって変化してしまうが、1mA程度のコレクタ電流であればトランジスタの発熱はまったくないので問題ないと言える。

また、\(R_{source}\)はギターのピックアップの出力インピーダンスを想定した値となる。

よって、式1と式8に当てはめれば次のように算出される。

$$Z_{IN}=2.82[MΩ],~~Z_{OUT}=367[Ω]$$

ここで回路図を見ると、入力にあるバイアス抵抗1MΩは交流的に接地されていると考えられるためこの抵抗も回路の入力インピーダンスの一部になる。よって\(Z_{IN}\)と1MΩの並列合成値が入力インピーダンスとなるので、回路の理論値は次の表の通りとなる。

項目
入力インピーダンス740kΩ
出力インピーダンス約400Ω
消費電流1mA(実測値)

Simplest BJT Buffer Module
Simplest BJT Buffer Module

今回もまた、モジュール化してブレッドボードで使いやすいようにしてみた。

前回のFETバッファよりも消費電流は多いが、出力インピーダンスを低くすることができるメリットがある。出力インピーダンスが400Ωということは、このバッファを通せばギターをマイク入力の機材へ挿すことができるということである。よって、アンバランスなDIとしても十分使うことができそうだ。

発振器を使ってオシロスコープで観察

バッファ回路の歪み試験
バッファ回路の歪み試験

トランジスタバッファ回路の性能を測定するため、図のような回路を組んでオシロスコープで観察してみた。発振器は、以前に作ったクラチャウド発振器を使った。

ギターなどのハイインピーダンス楽器の入力をシミュレーションしたいため、発振器の後に220kΩの抵抗を入れてハイインピーダンス化している。また、出力先のインピーダンスを自由に変えられるように可変抵抗を負荷として挟んでいる。

オシロスコープで波形の観察
オシロスコープで波形の観察

22Hz、1kHz、10kHzの正弦波を入力した時に、写真のようにキレイな出力が得られた。よって、ギターなどのハイインピーダンス楽器のバッファとして十分使えることが立証された。

R_POTの負荷をどんどん低くしていくと、5kΩ以下から入力、出力信号ともに振幅が減少していった。300Ω程度で振幅が半分になる。しかし波形は歪まずに正弦波を保っている。

一方で、信号源の220kΩの抵抗を取り払い、ローインピーダンスの信号を入力してみたところ500Ω以下から出力波形の歪みが目立つようになった。150Ωあたりで信号源の半分の出力となった。式8からも分かる通り、信号源の出力インピーダンスによってバッファ回路自体の出力インピーダンスが変化してしまうという少し厄介な性質がある。それでも、普通の用途では大体100〜500Ωの範囲で収まるようなので問題なさそう。

また、信号源の抵抗が700kΩの時に元の信号の丁度半分の振幅になったので、回路の入力インピーダンスは理論の通り700kΩ程度であることが分かった。

よって、実験結果からインピーダンスをまとめると次の通りである。

項目
入力インピーダンス700kΩ
出力インピーダンス100〜500Ω
消費電流1mA
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