ギターで使えるトランジスタ1石バッファ【エフェクタ製作#16】

今回は、バイポーラトランジスタ(BJT)1石で作れる最も簡単なギターベース用バッファ回路を紹介する。前回、もっとも簡単なFETバッファの紹介をしたが、もしかしたらその性能を上回るかもしれない。

エミッタフォロワ回路
エミッタフォロワ回路

トランジスタは一般にFETより入力インピーダンスが低いと言われるが、図に示すエミッタフォロワ回路であれば入力インピーダンスをかなり高くできることが分かった。ちなみにコレクタが電源に落とされているので、交流的にはコレクタが接地されているとみなすことができる。なのでエミッタフォロワ回路はコレクタ接地回路とも呼ばれる。

さて、この回路の入力インピーダンスと出力インピーダンスを計算したい。さまざまな書籍を漁ったが、エミッタ接地回路に関しては詳しく書いてあるものの、コレクタ接地回路に関してはあまり詳しく書かれていない。探し続けた結果、なんとWikipediaにその計算式が詳しく書かれていたのでそれを元に計算していく。

参考サイト

エミッタフォロワの入力インピーダンス

エミッタフォロワ回路
エミッタフォロワ回路

エミッタフォロワの入力インピーダンスは、次式で近似される。

$$Z_{IN} \approx βR_E \tag{1}$$

ただし次の条件を満たすこと。

$$(g_mR_E \gg 1) \land (β \gg 1) \tag{2}$$

βは交流信号における電流増幅値であるが、ここでは直流電流増幅値\(h_{fe}\)とほぼ同じと考えることにする。 また、\(g_m\)とは相互コンダクタンス(ベースとエミッタ間の電圧変化に対するコレクタ電流変化の比)で次式で与えられる。

$$g_m=\frac{I_C}{V_T} \tag{3}$$

さらに\(V_T\)は熱電圧と呼ばれ、常温(27℃)では26mVであることが知られている。

$$V_T=\frac{KT}{q}=26[mV] \tag{4}$$

よって、

$$g_m=\frac{I_C}{26\times10^{-3}} \tag{5}$$

である。

エミッタフォロワの出力インピーダンス

エミッタフォロワ回路
エミッタフォロワ回路

エミッタフォロワの出力インピーダンスは、次式で近似される。

$$Z_{OUT} \approx \frac{1}{g_m} + \frac{R_{source}}{β} \tag{6}$$

ただし次の条件を満たすこと。

$$(β \gg 1) \land (Z_{IN} \gg R_{source}) \tag{7}$$

\(R_{source}\)とは、テブナン等価なソース抵抗で、つまりは信号源の出力インピーダンスと考えて良い。例えばギター(パッシブ)が信号源になるならば200kΩ〜500kΩである。

\(R_{source}\)が大きくコレクタ電流も大きい場合、\(\frac{1}{g_m}\)はほとんど無視できる大きさとなる。 よって、式6を次のように簡略化できる。

$$Z_{OUT} \approx \frac{R_{source}}{β} \tag{8}$$

ギターで使えるトランジスタ1石バッファ回路

Simplest BJT Buffer Schematic
Simplest BJT Buffer Schematic

それでは、実際にギターで使えるトランジスタ1石バッファ回路を紹介する。こちらが今回作ったバッファ回路である。

トランジスタは2SC1815のBLランクのものを使用した。BLランクは\(h_{fe} (\approx β)\)が350〜700と高いため、今回の回路では入力インピーダンスを高くでき、そして出力インピーダンスを低くできることになる。

シリコントランジスター 2SC1815-BL
シリコントランジスター 2SC1815-BL

正規品、NPNシリコントランジスター、パッケージ:TO-92、IC:150mA、VCEO:50V、PC:400mW、hFE:350-700

Amazon

ちなみに、トランジスタの\(h_{fe}\)の測り方はこちらを参考に。テスタ1つあれば簡単に測ることができるので一度試してみよう。

最初からテスターに\(h_{fe}\)を測れる機能が付いているともっと便利。

AstroAI テスター デジタル テスター マルチメーター オートレンジ 6000カウント 電圧 電流 真の実効値 抵抗 連続性 静電容量 周波数 ダイオード トランジスタ 温度測定テスター 手動 自動モード 三年保証 日本語説明書付き DM6000AR
AstroAI テスター デジタル テスター マルチメーター オートレンジ 6000カウント 電圧 電流 真の実効値 抵抗 連続性 静電容量 周波数 ダイオード トランジスタ 温度測定テスター 手動 自動モード 三年保証 日本語説明書付き DM6000AR

Amazon

こちらの商品はトランジスタ専用のテスター。ファミコンのようなデザインで可愛い。

Longruner トランジスタテスター 日本語マニュアル マルチメーターテスター 1.8inch カラフルディスプレイ LCR-TC1テスター 多機能 TFTバックライト
Longruner トランジスタテスター 日本語マニュアル マルチメーターテスター 1.8inch カラフルディスプレイ LCR-TC1テスター 多機能 TFTバックライト

NPNとPNPトランジスタ、コンデンサ、抵抗、ダイオード、三極管、NチャネルとPチャネルMOSFET、IGBT、JFET、トライアックとバッテリなどの検出に広く使用できます。 対応する領域にコンポーネントのピンを置き、小さなハンドルをダイヤルすると、検出器が自動的にテストし、最終的にバックライトのTFT画面に結果が表示されます。 検出後、赤外線リモコンを「IR」ランプに合わせ、リモコンのボタンを押します。検出器が正常にデコードされれば、データコードと赤外線波形が表示されます。

AmazonRakuten

さて、この回路の入力インピーダンスと出力インピーダンスを計算してみよう。先ほどの式1と式8をもう一度示す。

$$Z_{IN} \approx βR_E \tag{1}$$

$$Z_{OUT} \approx \frac{R_{source}}{β} \tag{8}$$

また、それぞれの値を次のように設定した。

項目
\(β\)600
\(R_E\)4.7kΩ
\(R_{source}\)220kΩ

βの値は、1MΩを介してベース電流を与えたときにコレクタ電流を実測して計算した値である。実際、\(h_{fe}\)は温度によって変化してしまうが、1mA程度のコレクタ電流であればトランジスタの発熱はまったくないので問題ないと言える。

また、\(R_{source}\)はギターのピックアップの出力インピーダンスを想定した値となる。

よって、式1と式8に当てはめれば次のように算出される。

$$Z_{IN}=2.82[MΩ],~~Z_{OUT}=367[Ω]$$

ここで回路図を見ると、入力にあるバイアス抵抗1MΩは交流的に接地されていると考えられるためこの抵抗も回路の入力インピーダンスの一部になる。よって\(Z_{IN}\)と1MΩの並列合成値が入力インピーダンスとなるので、回路の理論値は次の表の通りとなる。

項目
入力インピーダンス740kΩ
出力インピーダンス約400Ω
消費電流1mA(実測値)

Simplest BJT Buffer Module
Simplest BJT Buffer Module

今回もまた、モジュール化してブレッドボードで使いやすいようにしてみた。

前回のFETバッファよりも消費電流は多いが、出力インピーダンスを低くすることができるメリットがある。出力インピーダンスが400Ωということは、このバッファを通せばギターをマイク入力の機材へ挿すことができるということである。よって、アンバランスなDIとしても十分使うことができそうだ。

発振器を使ってオシロスコープで観察

バッファ回路の歪み試験
バッファ回路の歪み試験

トランジスタバッファ回路の性能を測定するため、図のような回路を組んでオシロスコープで観察してみた。発振器は、以前に作ったクラチャウド発振器を使った。

ギターなどのハイインピーダンス楽器の入力をシミュレーションしたいため、発振器の後に220kΩの抵抗を入れてハイインピーダンス化している。また、出力先のインピーダンスを自由に変えられるように可変抵抗を負荷として挟んでいる。

オシロスコープで波形の観察
オシロスコープで波形の観察

22Hz、1kHz、10kHzの正弦波を入力した時に、写真のようにキレイな出力が得られた。よって、ギターなどのハイインピーダンス楽器のバッファとして十分使えることが立証された。

R_POTの負荷をどんどん低くしていくと、5kΩ以下から入力、出力信号ともに振幅が減少していった。300Ω程度で振幅が半分になる。しかし波形は歪まずに正弦波を保っている。

一方で、信号源の220kΩの抵抗を取り払い、ローインピーダンスの信号を入力してみたところ500Ω以下から出力波形の歪みが目立つようになった。150Ωあたりで信号源の半分の出力となった。式8からも分かる通り、信号源の出力インピーダンスによってバッファ回路自体の出力インピーダンスが変化してしまうという少し厄介な性質がある。それでも、普通の用途では大体100〜500Ωの範囲で収まるようなので問題なさそう。

また、信号源の抵抗が700kΩの時に元の信号の丁度半分の振幅になったので、回路の入力インピーダンスは理論の通り700kΩ程度であることが分かった。

よって、実験結果からインピーダンスをまとめると次の通りである。

項目
入力インピーダンス700kΩ
出力インピーダンス100〜500Ω
消費電流1mA

オススメの書籍

トコトンやさしいトランジスタの本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)
トコトンやさしいトランジスタの本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)

電子回路の主役であり、その基本でもあるトランジスタ。トランジスタの仕組みを理解し、その使い方を習得することは、電子回路を知り、回路設計を行うための第一歩となる。本書では、このトランジスタの仕組み、記号、回路を丁寧に説明、その選び方、使い方を解説するとともに、それを使った応用例までを紹介する。

Amazon
サウンド・クリエイターのための電気実用講座
サウンド・クリエイターのための電気実用講座

面白くないものはつまらない。 音や音楽に興味があるけど、電気の公式は見たくもない人、電気を「理科系」だと思っている人、勉強が嫌いな人、あなたのための本です。電気って、本当はすごく面白い。夢とロマンの世界なんです。それを知ってもらうために純粋文科系の私が書きました。読んでくれた人、ありがとう!これから読む人、よろしく!

AmazonRakuten
定本 トランジスタ回路の設計―増幅回路技術を実験を通してやさしく解析 (定本シリーズ)
定本 トランジスタ回路の設計―増幅回路技術を実験を通してやさしく解析 (定本シリーズ)

電子回路のブラックボックス化が進む中、現代のエレクトロニクス技術の原点といえるトランジスタ回路の設計技術を、基礎の基礎からやさしく解説しました。

Amazon

Amazonでお得に購入するなら、Amazonギフト券がオススメ!

\Amazonギフトがお得/

コンビニ・ATM・ネットバンキングで¥5,000以上チャージすると、プライム会員は最大2.5%ポイント、通常会員は最大2%ポイントがもらえます!
Amazonギフト券

\この記事をシェアする/