リバースDI(Re:AMP)をつくってみよう【モジュラーエフェクタ制作】
ダイレクトボックス(DI)の役割が、ハイインピーダンスをローインピーダンスに変換することであれば、この記事で紹介するリバースDIは、ローインピーダンスをハイインピーダンスに変換するものです。逆ダイレクトボックスと言ったところです。
「そんなの何に使うの?」と言われると、多重録音などに使えます。リバースDIにライン信号を通せば、ギターのようなひ弱な信号へ変換され、キレイにエフェクターがかかるという訳です。 マイク・オールドフィールドのような多重録音マニアな方、つくってみませんか? Mike Oldfield - Tubular Bells Full Album - YouTube
リバースDIの使いみち
冒頭に説明したとおり、リバースDIはライン出力などのローインピーダンスをハイインピーダンスな信号へ変換するために使われます。ライン出力をそのままエフェクターにつないでも、ギター信号とは違いキレイ効果が得られません。そんな時にリバースDIを使ってみましょう。 次の図のようにライン出力後に、今回制作するリバースDIの「Re:AMP」をつなぎます。
▼ 種類は少ないですが、リバースDI製品は立派に売られてます。
ただし、お値段がアレなので自作するのも良いでしょう。
リバースDI「Re:AMP」の回路図
こちらが今回制作したリバースDI「Re:AMP」の回路図になります。
1kΩ:500kΩのトランスは、山水のST-14が使えます。
▼ このトランスは、以前パッシブDIを作ったときにも使用しました。
出力信号が大きすぎる
最初は、パッシブDIの入力と出力を単純に逆にすれば、リバースDIの完成だと思いました。しかし、実際やってみると都合の悪いことが起きます。インピーダンスの変換はできても、出力の信号レベルが大きすぎてしまうのです。
ST-14は、1kΩ:500kΩで、つまり巻数比は1:22.4になります。ですから、入力した信号は22倍もの大きさになって出力されます。
実際に測定してみたたところ、1Vppの信号が15Vppほどの大きさになってしまいました。15Vppと言えば、30Vもの振れ幅になります。通常のエフェクタ電圧である9Vを、ゆうに超えてしまいます。 これでは、エフェクターがキレイにかかるどころではないですよね。
出力にアッテネータをつける
「出力を下げるためには、トランスの出力側にボリュームをつければ良い?」
ところが、それだとダメです。なぜなら、出力インピーダンスが変わってしまうからです。出力側のインピーダンスは、ピックアップのような固定ハイインピーダンスにしたいのです。ここでは500kΩですね。
入力にアッテネータをつける
そこで、入力側にアッテネータをつけて、ライン信号を減衰させることにしました。アッテネータは、T型アッテネータを使いました。T型アッテネータは、インピーダンスを変えずに音量を減衰できる特徴があります。
どの程度の減衰になればよいかは、次のように考えました。
まず、この「Re:AMP」は、ハンディレコーダーやiPhoneなどの民生機のライン出力を想定してます。民生機のライン出力は、大きくても1Vpp以内です。また、強く弾いたギターの生音は、500mVpp以上出ます。ですから、ライン信号の振幅がそのまま出力に出てくれればよいのです。トランスによる増幅は必要ありません。
これらを元に、T型アッテネータのインピーダンスを1kΩに設定し、減衰量を-19dB(約1/9)としました。回路図の800Ωと220Ωの抵抗がT型アッテネータになります。800Ωの抵抗は、330Ωと470Ωを直列にして使いました。
モジュラーエフェクタ化
回路を元に、基板をつくって「Re:AMP」をつくってみました。写真のように、モジュール化しました。
回路図には書いてませんが、スルースイッチを設けて原音と切り替えられるようにしました。
ギターの生音をレコーダで録音し、ライン出力ちょくの信号と「Re:AMP」を通した信号とで、エフェクターのかかり具合を比較してみました。とくに歪み系エフェクターだと違いがはっきりしました。ライン出力を直接エフェクターにつなぐと、音色が暗く、少し重たい印象になり不自然でした。しかし、「Re:AMP」を通すと臨場感やリアル感がでて、エフェクターの効果が自然になりました。