バッファーエフェクター 両電源、カップリングコンデンサレス【BUFFER!! V3.2】〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その8
オペアンプのボルテージフォロワ回路を使ったバッファーエフェクターです。両電源を使うことで入力と出力のカップリングコンデンサを除去でき、クリアでナチュラルサウンドの実現に成功しました!
カップリングコンデンサレス
カップリングコンデンサを除去するために、両電源を採用しました。これにより電解コンデンサのESRやタンデル性能の悪さによる音質劣化を防ぐことに成功し、クリアなサウンドを実現しました。
バッファーのみでジャズベースを演奏してみました。こちらの動画をご覧ください。
ちなみに動画内で弾いている曲は、バッハの「プレリュード/平均律 第1巻 第1番 ハ長調 BWV-846」をエレキベースにアレンジしたものです。 【Bach】Prelude in C major BWV-846 for Electric Bass - YouTube
オペアンプによるシンプルなボルテージフォロワ回路です。2回路入りのオペアンプの1回路だけを使いました。 以前のバージョンでは、オペアンプの余った回路で仮想GNDを作って単一電源で動かしていました。しかし、仮想GNDと出力端子に10mV程度のオフセット電圧が生じてしまい、カップリングコンデンサが必要でした。オフセット自体を除去することも可能ですが、回路が複雑化します。両電源にした方が結果が良いと判断し、本バージョンへ至ります。4558を使った場合、GNDと出力端子のオフセット電圧を1mV以下に抑えられました。
オペアンプ
搭載オペアンプは、ローノイズに改良されたNJM4558DDです。
4558の入力部はPNPトランジスタで構成され、入力抵抗が5MΩ以上と高くてエフェクター回路で使いやすい定番のオペアンプです。位相補償内蔵で静電負荷容量に強く、ボルテージフォロワでも発振の心配がありません。入力インピーダンスの高いデュアルオペアンプであれば、他のオペアンプに入れ替え可能で、たとえば FET入力のTL072 へ入れ替えると違いが分かりやすいです。とはいえ、4558でも十分に高音質なナチュラルサウンドが楽しめます。
インピーダンス
入力インピーダンスは約500kΩで設計しました。もしも1MΩへ変更したければ、回路図中のR1の値を1Mへ変更してください。経験上、入力インピーダンスが高過ぎると高域がうるさいので500kΩがおすすめ。外来ノイズの影響も受けにくいです。 出力先の負荷は4558の性能上、2kΩ以上で使用してください。
はんだ
過去に7種類ほど、はんだによる音質を比較しました。視聴した結果、DUTCH BOY(黒缶)がしっくりきたので採用。基板はエッチングによる手作り基板です。銅箔表面は酸化防止のためにはんだメッキしました。DUTCH BOYは透き通るような低域の実現と、きらびやかな高音域の艶があり、ギターやベースなどと相性が良いです。残留フラックスは フラックスクリーナー でキレイに除去済みです。
▼ はんだによって音質が結構違うんです!
電子部品
性能の良い部品を贅沢に使用。各抵抗は、アムトランスの音響用カーボン抵抗を使用。1本300円ほどする超高級抵抗です。音質面でも優れている3/4W耐圧。
電源周りのデカップリングコンデンサは、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーとメタライズドポリプロピレンフィルムを使用。どちらのコンデンサもESRが低く、タンデルも小さくて高性能です。
▼ コンデンサの性能についてはこちら。
線材はBELDEN8501(AWG18)を使って配線。エフェクターでは少し太めの線材(通常はAWG20かAWG22が多い)ですが、低周波での抵抗値が低く、可聴領域範囲の高域まで十分に伸びます。
そして線材をツイストペア(右巻き)にすることで、インダクタンス成分を下げつつ、ケース内部のノイズ対策を施しました。
▼ 線材の性能を調べたり、巻き方で性能アップするのか!?実験してみました。
シャーシと接地
ケースは無塗装のHAMMOND1590BB(119.5×94×34mm)を使用。大きめの筐体を使うことでGNDが太くなり、電源の安定化とノイズ耐性が向上します。基板からシャーシへは一点アースです。
フォーンジャックは安心のNeutrik社製。インプット側にプラグが刺し込まれていない状態では、HOTとGNDはショートします。これにより、エフェクタ自体が発生するノイズを確認できます。表面の印字は、レーザープリンタによるラベルシールです。
バッテリー
写真の通り006Pの9Vバッテリーを2本必要です。電池交換では、2つとも新品のものへ交換してください。バッテリーの電圧が大きく異なると正常に動作しない可能性があります。
バッテリースナップは基板に直付け。バッテリーをしっかりと固定でき、ケース内でバッテリーが揺れ動くこともありません。
電源スイッチ
両電源のため電源のオンオフは2連のトグルスイッチを使用。音質を優先するためフットスイッチは付けず、シンプルに組み立てました。せっかくカップリングコンデンサを除去したのに、フットスイッチによるトゥルーパス機能を付けるのは冗長。使用上を考えても、演奏中で頻繁にオンオフするニーズはなさそうかなと。バッテリーを長持ちさせるためにもLEDは付けてません。トグルスイッチの上下だけで電源オンオフの状態確認は十分です。
ドレスガードで、スイッチをケース内へ埋め込み。持ち運びする際に誤って電源をオンにする心配もありません。スイッチも折れることなく耐久性もアップします。
こんな使い方も
最後に、こんな使い方もできるというアイデアのご紹介。
- エフェクタ前段にバッファーを入れる
- オールドエフェクターのの後にバッファーを入れる
- DIとして使う
①がもっとも一般的な使用用途です。パッシブPUの微弱信号を増強することで音が太くなり、後に様々な機材を繋いでも音質劣化しにいです。 ②は、オールドエフェクターの出力インピーダンスが高い場合にその先に繋ぐ機材によっては本来の性能を発揮できない場合があるからです。オールドエフェクターの後にこのバッファーを入れることで、本来のサウンドエフェクトが甦り音質の改善に繋がります。 ③は、録音機材へ信号を渡す中継機としてバッファーが役に立ちます。大抵の録音機材は入力インピーダンスは2kΩ以上でしょうから、DIの代わりにバッファーの出力信号を録音機材へ直接入力できます。 私はベースからバッファーエフェクターを通し、モノラルをステレオ信号へ変換、ヘッドホンアンプで鳴らして自宅練習様で使ってます。ベースからヘッドホンへの最短接続ですから、究極にナチュラルサウンドが楽しめますよ♪
リバースタイプ
こちらは、本エフェクターをご購入いただいたお客様からご要望があり製作したリバースタイプです。エフェクターボードに貼り付けても電池交換がしやすいように、シャーシを裏側にして使えるようにしました。ジャックの位置も反転させ、電源スイッチも手前の側面へ移動させました。