オペアンプ一個で作れるオーバードライブ【エフェクタ製作#17】

Overdrive ONE Modular Effector
Overdrive ONE Modular Effector

今回は、1つのオペアンプで作れるオーバードライブの自作回路を紹介する。

Overdrive ONE Schematic
Overdrive ONE Schematic

こちらがその回路図。片方のオペアンプは、安定したバイアス電位を作っているだけなので、バイアスを単純な分圧抵抗に置き換えれば1回路のオペアンプだけで作れてしまう。とてもシンプルな回路。まだ試作段階だが、オーバードライブと呼ばれる回路は大抵このような回路になっている。ギターでもベースでも使えるように設計してある。

Overdrive One回路の解説

それでは、Overdrive One回路の解説を行なっていく。

最初の入力段のオペアンプでは、ピックアップのようなハイインピーダンス出力を受けれるように、入力インピーダンスの高い非反転増幅へ入力している。この場合、2つの1MΩの抵抗の並列合成の値500kΩがこの回路の入力インピーダンスとなる。

また、非反転増幅回路の構成により抵抗RsとRfで増幅率がきまる。その増幅率は\(A=\frac{Rf}{Rs}\)である。よって、100kBの可変抵抗は増幅率(Gain)を決めるもの。この場合、最大で100倍まで増幅が可能。

さて、信号が増幅され最大電圧がダイオードのVf(順方向電圧)約0.6Vを超えると、2つのダイオードがオンになる。オペアンプのイマジナルショートを考えれば、オペアンプの2番端子の非反転入力はバイアス電位(仮想GND)であるため、出力がダイオードによってクリップされるわけだ。よって、可変抵抗でクリーンな音から複雑な歪みまで作れるのがこのオーバードライブの特徴である。

回路図の「Scream」というスイッチは、さらに過激に歪ませるためのもの。

スイッチがオンの状態では、Rfは100kΩまでなので増幅率が100倍までに制限される。しかし、スイッチがオフの状態になるとRfが絶縁された状態になる。つまり、無限大の抵抗がRfになっていると言える。よって\(A=\frac{\inf}{Rs}={\inf}\)により、増幅率は無限大までに膨れ上がる。

もちろん、実際には無限大にはならない。しかし、このスイッチにより最大限の歪みが得られることは間違いない。音色の印象としては、ディストーションやファズに近い。

わざとオペアンプを発振させて、ギターアンプのフィードバックのような効果を出している。もはや、叫んでいるように聴こえるので「Scream」と名付けた。もちろん、Screamモードになってからは可変抵抗のGainは効かなくなる。

オペアンプを発振させたくない場合は、クリッピングダイオードと並列に10pFほどのコンデンサを入れれば随分大人しくなる。

最後に、10uのコンデンサCがかなり重要。このコンデンサを入れない場合、ダイオードが急にオフになり、音を伸ばした時に不自然な途切れ方をしてしまう。それを防止するために必要なコンデンサでもあるが、このCは、ハイパスフィルタの役割も持っている。そのため、あまりCの値を小さくすれば低音域が削られ過ぎてしまう。私はベース弾きなので、ベース音を聞きながら大きめの10uの値に決定した。

もし、ギターを鳴らして、重低音が出過ぎてると思ったらCの容量を小さくしてみよう。実際にコンデンサを色々と入れ替えながら、自分好みの音に調整していくのがベストだ。

ところで、Cのコンデンサはアースへ落とされている。もし、コンデンサがなければ、Rsは普通バイアスへ繋ぐはず。ところが何故かこの場合、アースへ落とさないとうまく動作しなかった。

実は、これにハマって原因探しに数時間も費やした。なぜ動作しないのか、今でも理由はよく分かっていない。

Overdrive ONの基板製作

Overdrive ONEの基板製作
Overdrive ONEの基板製作

Overdrive ONEの配線図
Overdrive ONEの配線図

Overdrive ONEモジュールの完成
Overdrive ONEモジュールの完成

銅基板でエッチングして、この回路を組み立てた。背の低い部品から半田付けするとスムーズに半田付けできる。

可変抵抗は基板実装のものではないが、ジャンパワイヤを使ってうまいこと固定した

手書きの配線図だが、参考になるかもしれないので一応載せておく。ピンをつけておくとブレッドボードで使いやすく便利だが、以前作った「Fuzz Face」同様、歪み系は回路内のインピーダンスが高くなるためか周りのノイズを拾いやすい。

だから、アルミシャーシに入れた方が無難そうだ。幸いそれも考えて、このままエフェクタケースに入れられるように可変抵抗とスイッチの配置を設計した。

オペアンプは取り替えられるようにソケットをつけて実装した。最初は4558で試したが、特にクリーントーンの時の抜けが悪く感じたのでTL072を使うことにした。

10PCS TL072CP DIP8遅延オペアンプオペアンプICチップ
10PCS TL072CP DIP8遅延オペアンプオペアンプICチップ

OP Amps TL072CP Supply Voltage: Min 7V,Max 36V Operating Supply Current: 1.4 mA Number of Channels: 2 Channel; Input Type: Rail-to-Rail Package Quantity: 10 PCS

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各自で色々なオペアンプを試して、自分好みを見つけるのも楽しいだろう。

ただし、5532を付け替えることは推奨しない。できないわけではないが、5532の入力インピーダンスがそもそも低いため、1Mの抵抗を入れても100k程度になってしまう。

これだと、ギターやベースのPUを直で受けるにはインピーダンスが低すぎる。多分、音が小さくなり音質も劣化しまうだろう。

どうしても5532などの入力インピーダンスが低いオペアンプを使いたい場合は、前段にバッファ回路を挟もう。FETやトランジスタを使って簡単に作ることができるので、よかったらこちらの記事を参考に。

さて、なかなか実用的で楽しいオーバードライブが出来上がった。

ゲインが小の時はクリーントーンになり、バッファアンプやブースターとして使う事ができる。ゲインが中のときは、以前作った「Bass Brass Fuzz」のような金管楽器の音を作ることさえできる。

そして、ゲインを大にすればいわゆるオーバードライブらしい歪みが得られる。

さらに、Screamモードに切り替えた瞬間「過激な叫び」が得られる。すでにそこには、オーバードライブといった雰囲気は存在しない。それでも、その叫びに「喜び!?」や楽しを感じるのであれば、是非Screamスイッチをつけよう。「うるさいだけじゃん」と思うのなら、Screamスイッチは外して短絡してしまおう。

Overdrive ONE Modular Effector
Overdrive ONE Modular Effector

今回のOverdrive ONEは、かなり使えるのでモジュラーエフェクタとしてラックにマウントできるようにした。モジュラーエフェクタの詳細はこちらの記事へ。

これ一台あれば、幅広い用途に役立ちそうだ。オールインワンなオーバードライブという意味も込めて「Overdrive ONE」と名付けた。名機と呼ばれるエフェクタとサウンドを比較しても面白いと思う。

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BOSS Super OverDrive SD-1
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エフェクター製作にオススメの書籍

最後にエフェクターの電子工作でオススメな書籍を紹介しておく。どちらの書籍も大塚明先生が書いたもので大変良書だ。しかし、残念ながら現在廃盤になっている。品切れまたは高価格になっているので、もし安く手に入るようなら買って損はないだろう。

  • 専門的知識がない方でも、文章が読みやすくおもしろい
  • エレキギターとエフェクターの歴史に詳しくなれる
  • 疑問だった電子部品の役割がわかってスッキリする
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また、こちらは別の方が書いた本だが写真や図が多く、初心者の方でも安心して自作エフェクターが作れると思う。実際に製作する時の、ちょっとした工夫もたくさん詰まっているので大変参考になった。

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