Fuzz Faceを作ろう!NPNシリコントランジスタ版エフェクタ製作
Fuzz Faceを作ろう!NPNシリコントランジスタ版エフェクタ製作
この記事では、NPNシリコントランジスタ版のFuzz Faceの自作回路を紹介します。元祖のファズフェイスは、PNPのゲルマニウムトランジスタが使われていましたが、ゲルマニウムトランジスタは現在入手が困難なため、シリコントランジスタで代用しました。また、元の回路はマイナス電源で設計されてましたが、NPNトランジスタを使うことで、プラス電源で設計ができ分かりやすくなりました。
Fuzz Faceについて
Fuzz Faceはアービターエレクトロニクス社が1966年にを発表したエフェクタペダルです。その後の、製造会社はいろいろと変わり、今ではDunlop社がFuzz Faceを作っています。
Fuzz Faceは、ギターの歪み系「ファズ」として人気があり、ジミー・ヘンドリックスがFuzz Faceを使用していたことはあまりにも有名でしょう。Fuzz Faceはエレキギターだけでなく、エレキベースでも使用しているミュージシャンがいるようです。
ところで「ファズ」というのは、元々は電気部品の破損やスピーカーの故障などよって発生する歪音のことだそうです。ただし、オーバードライブもディストーションもファズも、明確な定義はなく、音色の印象で決められていることが多いようです。
初期のFuzz Faceではゲルマニウムトランジスタが使われていました。その後、ゲルマニウムトランジスタの衰退とともに、シリコントランジスタへ移り変わっていきます。ゲルマニウムトランジスタとシリコントランジスタでは、歪みの音質にかなり違いがあります。そのため、初期のゲルマニウムトランジスタが使われていた初期のFuzz Faceを愛用する方も多いと思います。
Fuzz Faceの丸い形になった有名な話として、開発者のアイヴァー・アービターが、マイクスタンドの丸い台を見た時に思いついたそうです。
Fuzz Faceの音色
こちらは Wikipedia で紹介されている、シリコントランジスタ型のFuzz Faceのサウンドになります。Fuzz Faceの音色のご参考になさってみてください。
こちらは「The Jimi Hendrix Experience」のライブ映像です。ワウペダルと、Fuzz Faceを使っているようすを見ることができます。
Fuzz Face(NPNシリコントランジスタ版)の回路
こちらが今回制作したFuzz Faceの回路です。初期のFuzz FaceはPNPのゲルマニウムダイオードですが、ここではNPNのシリコントランジスタに変えています。
トランジスタは入手しやすい2SC1815を使用してます。必要ならばで、回路の出力にボリュームを取り付けてください。
オシロスコープで波形の観察
Fuzz Faceの回路を組んでオシロスコープで出力波形を観察してみました。写真は正弦波1kHzを入力した時の波形です。
想像通り、過激な信号増幅によってクリップされ、矩形波になっています。デューティ比を持ったPWM波形に近いですね。
▼ またギターを鳴らした時にオシロスコープで観察した波形を動画にしてみました。
この動画では、ギターの1弦だけを鳴らしています。音の減衰とともに、デューティ比がだんだん狭くなっていきます。入力信号の大きさ、つまりギターの音量によっては片側クリップのような波形になることが分かりました。よって、オペアンプを使ったコンパレータの音とも違うはずです。ここら辺がいわゆる「Fuzz Faceらしさ」の音色を作り出すカギになっているのかもしれませんね。
Fuzz Faceのモジュール化
先ほど紹介したFuzz Faceの回路を元に、基板を制作して電子部品をはんだ付けし、モジュール化してみました。Fuzz Faceは部品数も少ないので、かなりコンパクトにまとまります。
回路図では、増幅率を変えるための1kΩの可変抵抗を付けてありますが、ここでは省略してしまいました。いちおう、ギター側のボリュームを調整することでも、似たような効果は得られます。
ちなみに、回路のインピーダンスが高いため、外部の電磁波ノイズを拾いやすいです。まともに動かそうと思うと、アルミケースに入れるなどしてシールド対策が必要になります。
自作Fuzz Faceの消費電流は0.8mA程度でした。9V電池を500mAhとすれば、625時間ほども稼働可能な計算になります。
その後、Fuzz Faceをラックにマウントできるように、モジュラーエフェクタ化しました。今度は、1kΩの可変抵抗を取り付けて、歪みを変化できるようにしてあります。
ところで、Fuzz Faceはハイインピーダンス楽器を直接受ける前提で設計されているようで、ローインピーダンス信号の入力だと正しく歪みません。つまり、ライン出力やFuzz Faceの前段にエフェクタを挟んでしまうと、Fuzz Faceらしい歪みが得られないのです。どうしてもローインピーダンス出力をFuzz Faceに繋ぎたい場合は、REAMP(リバースDI)のようなハイインピーダンス変換器を通すとキレイに歪ませることができます。リバースDIはリバースDI(Re:AMP)をつくってみよう【モジュラーエフェクタ制作】でカンタンに作れますので、興味ある方はご参考になさってみてください。