【自作マイクへの道①】ECM(エレクトレットコンデンサマイク)の使い方
こんなこと、やります。
- ECMの使い方の解説
- ECMのモジュール化
▼ 下記動画ではこの記事で紹介するECMを使って、Raspberry Piでサウンドレベルインジケーターを実現しました!
つかうもの
この記事でつかうものをご紹介します。
ECMカプセル
今回使用したECMは、秋月電子通商で購入したWM-61A相当品です。
WM-61Aとは
WM-61Aとは、昔パナソニックが製造していたECMでして、音質に定評があることで有名です。残念ながらすでに廃盤となってしまったので、私が使ったのはあくまでWM-61A相当品になります。 基本、ECMの使い方はどれも同じですので、他のECMでもこの記事のやり方が参考になります。
WM-61A相当品は、通常のECMよりも小型です。しかし、その大きさからは想像できないほどの、迫力のある音質です。
その他の電子部品
その他に、固定抵抗と電解コンデンサを使用します。 2.2kΩの抵抗があればベストです。コンデンサは22uF程度の電解コンデンサで良いです。
ECMの使い方の解説
ここではECMの使い方の解説をおこないます。
ECMとは
ECMとは、エレクトレットコンデンサーマイクのことです。 コンデンサマイクと同様に、2枚の電極版の片方が振動することによって、音を電気信号として取り出すことができます。 ただし、ふつうのコンデンサマイクと違うのは、エレクトレットというあらかじめ電気を帯びている素子が使われていることです。これによって、ふつうのコンデンサマイクのように外部から電圧を加えて誘電分極を起こさせる必要がありません。そのため小型化が可能で、スマホやイヤホンをはじめ、小型機器のマイクとして広く使われてます。 また、ECMには通常トランジスタが内蔵されてますから、実際は外部電源が必要になります。
ECMカプセルの構造
ECMカプセルの中身の構造はふつう次のようになってます。
FETの役割
ECMの銀色のカプセルの中には、マイクユニットだけでなくFETが内蔵されてます。FETは、マイクユニットから発生した超微弱電流を大きくする役割をもってます。 ようするに、信号の出力インピーダンスを低くし、外来ノイズの影響を受けにくくする働きをします。
FETについて詳しくは もっとも簡単なFET1石バッファー回路〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その4 や ソースフォロワ(FET)の出力インピーダンス をご覧ください。
ECMの回路図例
実際にECMを使うには、次のような回路を組みます。
このような定数で設定してみました。
名称 | 値 |
---|---|
+Vs | 1.2V |
RL | 3.3k |
C | 22μF |
ECMの供給電圧
最初にも説明しましたとおり、ECMの内部にはFETが入ってますので、外部電源を供給しなければなりません。
今回使うECMは、1.1〜10Vの電圧範囲で動作が可能でして、標準電圧が2.0Vです。つまり、電池一本でも動かせるということです。
ECMの極性
ECMの端子には、プラスとマイナスの極性があります。マイナスは、よく見るとアルミカプセルと同じGNDに落とされてます。どちらがプラスかマイナスかわからなくなった場合は、テスターでアルミカプセルと端子を導通させてみて、ショートするほうがマイナス端子と判断しましょう。
負荷抵抗RL
ECMへ電源供給する際のRLの負荷抵抗は、2.2kΩが標準のようです。手持ちの抵抗の都合上3.3kΩとしましたが問題ないです。 実際いろいろな抵抗を試してきて、1kΩ〜10kΩの範囲で使用できました。抵抗値を小さくすれば出力が大きくなり、抵抗値を大きくすると出力は小さくなります。
カップリングコンデンサC
コンデンサーCは、いわゆるカップリングコンデンサになります。 カップリングコンデンサの役割は、信号のような交流ACと、供給電圧のような直流DC成分を分けることにあります。 カップリングコンデンサの値の決め方は、その先につなぐ機材の入力インピーダンスを考えなければなりません。とはいえ、マイク入力などにつなぐでしょうから、入力インピーダンスを600Ω以上と考えればよさそうです。入力インピーダンスを600Ωと想定して、22μFではカットオフ周波数は12Hzになります。
カットオフ周波数とは
カットオフ周波数とは、ローパスフィルタやハイパスフィルタにおいて「カットオフ周波数以下または以上の周波数がどんどん通りにくくなる」というような意味です。 正確には、一次フィルタで、-6dB下がった地点の周波数を「カットオフ周波数」と呼びます。
一次RCフィルタ回路におけるカットオフ周波数は、次の式で計算できます。
$$ fc = \frac{1}{2πCR} $$数学的な話になりますが、興味のある方は デジタル信号におけるRCハイパスフィルタ や デジタル信号におけるRCハイパスフィルタ をご覧ください。
ECMをモジュール化
ブレッドボードで扱いやすくするために、ECMをモジュール化してみました。このような少ない部品の回路でも、モジュール化しておくと後々使い回しが効き、精神衛生的にもよいです。
音質は?
WM-61A相当品のECMの音質の感想です。 音は落ち着いた音色で、パワフルな印象があります。色々なECMと比較してみても、WM-61A系は特徴的な感じがします。
ECMを本格的に高音質で使いたい場合は、ぜひファンタム電源化してみましょう。こちらの記事で詳しく解説してます。
発展
冒頭の動画で紹介したようにこのECMモジュールを使って、Raspberry Piで音センサにして遊んでみました。詳しいやり方は下記の記事をご覧ください。
▼ アナログ出力ですが、簡易的な音センサも販売されてます。
▼ ECMを使った自作マイクはシリーズ化してますので合わせてご覧ください。
ECMをイヤホンに埋め込んで、ASMRのバイノーラルマイクを作ってみても面白そうです。
お財布にやさしいECM
▼ ちなみに、このようなマイクが2、3千円の低価格で買えるのもECMのおかげです。
音もけっこう侮れません。ちゃんとバランスアウトになっていたり、ケーシングされて指向性を出していたりと、安いながらにも色々工夫されてます。 結局マイクの製作ってシャーシがかなり重要なんです。そこらへんは資本主義には勝てないと思う今日このごろです。