ソースフォロワ(FET)の出力インピーダンス

ソースフォロワ(FET)の出力インピーダンス

この回路図は、以前に作ったギターで使えるFETバッファ回路(ソースフォロワ)である。ところで出力インピーダンスが一体どのくらいになるのか気になった。十分低いとは言え、オペアンプほどは低くならないようである。

FETソースフォロワ回路
FETソースフォロワ回路

FETの入力インピーダンスは、ゲートの抵抗が無限大と考えて1MΩの抵抗そのものが入力インピーダンスとなるため計算するまでもなく簡単だ。しかし出力インピーダンスとなるとハテナが浮かぶ。今回はそんな疑問を解決すべく、FETソースフォロワ回路の出力インピーダンスを計算する方法を調べてみた。

出力インピーダンスの計算

FETを使ったソースフォロワ回路は、回路図を見ての通りドレインが電源に直接繋がっているため、交流的には接地されていると考えることができるのでドレイン接地回路(Common drain)とも呼ばれる。

そんなドレイン接地回路の出力インピーダンスだが、Wikipediaに計算方法が載っていた。次が出力インピーダンス\(Z_{OUT}\)を計算する式である。

$$Z_{OUT} = \frac{R_S}{g_{m}R_S+1} \tag{1}$$

もし\(g_mR_S \gg 1\)ならば、次式で近似することもできる。

$$Z_{OUT}\approx \frac{1}{g_{m}} \tag{2}$$

\(g_m\)はバイポーラトランジスタのエミッタフォロワのインピーダンス計算にも出てきたが、FETの場合は計算が異なるので注意しよう。とにかくこの\(g_{m}\)の値さえわかれば簡単に出力インピーダンスを計算できるようだ。

gmの計算

\(g_m\)とは、相互コンダクタンスと呼ばれるものである。単位はシーメンス[s]である。ゲート電圧の変化量を\(ΔV_G\)としたときのドレイン電流の変化量を\(ΔI_D\)とすると、

$$g_m=\frac{ΔI_D}{ΔV_G}$$

で表される数値である。この相互コンダクタンスが大きい素子ほど高い増幅率が得られることになる。また、データシートによっては伝達アドミッタンス\(|Y_{fs}|\)と表記されたりするが、\(g_m\)と同じと考えて良いようだ。

それでは実際にFETの\(g_m\)を測定してみよう。FETはNチャネルの2SK303を使用した。

gm算出用の測定回路
gm算出用の測定回路

測定回路は図のように組んだ。可変電源を用意し、ゲートソース間に電圧Vgsを掛ける。そのときのドレイン電流Idを測定していく。

2SK303はNチャネルなので、負の電圧を掛けることに注意しよう。Vgsを100mV間隔で0V〜1Vまで可変させたときのIdを測定した結果が次の表である。

Vgs [mV] Id [mA]
0 3.14
-100 2.7
-200 2.28
-300 1.87
-400 1.49
-500 1.13
-600 0.8
-700 0.5
-800 0.25
-900 0.08
-1000 0.01

2SK303のVgs-Id特性
2SK303のVgs-Id特性

直線性の良い-600mV〜0Vの値をもとに計算すると、\(g_m\)は3.9[ms]となった。ただし、シーメンスの単位がミリであることに注意しておく。

ちなみに、ゲート電圧0Vの時のドレイン電流は\(I_{DSS}\)と表記される。この場合だと、\(I_{DSS}=3.14[mA]\)である。

FETソースフォロワの出力インピーダンス

FETソースフォロワ回路
FETソースフォロワ回路

それでは最後に、最初に紹介したFETソースフォロワ回路の出力インピーダンスを算出してみよう。

この回路では\(R_S=3.3[kΩ]\)であるので、\(g_m=3.9[ms]\)として式1に当てはめて計算すると、出力インピーダンスは238Ωである。前回の分圧法による測定で算出した出力インピーダンスは800Ω程度であった。

どちらにしろ、このバッファ回路の出力インピーダンスは1kΩ以下であることは間違いなさそう。しかし、オペアンプの出力インピーダンスが100Ω以下であることを考えるとちょっと高め。10kΩ以上の負荷でないと波形が歪んでしまうので注意が必要だ。

ちなみに、バイポーラトランジスタを使ったバッファ回路(エミッタフォロワ)のインピーダンス計算はこちらの記事を参考に。

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