ECMをファンタム電源で動かそう!

こんなこと、やります。

  • ECM(エレクトレットコンデンサマイク)をファンタム電源で動かす
  • ECMカプセルのシールド対策
  • バランス出力(平衡回路)のECMを作る

ECMをファンタム電源で動かそう!
ECMをファンタム電源で動かそう!

ECMの基本回路(おさらい)

ECM(エレクトレットコンデンサマイク)は、ひとつ数十円から数百円程度で手に入る高音質なコンデンサマイクです。小型なため、ラベリアマイク(ピンマイク)やモバイル端末でよく使われています。

基本的には次のように、外部から電源供給してECMを使います。

ECMの基本回路図
ECMの基本回路図

ECMの両端にかかる電圧はECMの種類にもよりますが、1V〜10V程度になるように電源電圧Vsと抵抗RLを設定します。

低電圧でも駆動できるため、スマホのイヤホンジャックから供給されるプラグインパワー(約2V)で動かすことができます。

詳しくはこれらの記事で解説してますので、ご参考になさってみてください。

プラグインパワーの落とし穴

プラグインパワーでのマイク制作は、抵抗とコンデンサの電子部品だけで済むため、作るのがとてもカンタンです。しかし、2V程度の電源電圧ですと、ECMの性能をフルで発揮しきれません。つまり「プラグインパワー駆動のECMは音が悪い」というのが、実験結果による認識です。

プラグインパワーのような低電圧しか経験のない方は、ためしに耐圧ギリギリの10V程度の電源電圧でECMを駆動してみてください(耐圧オーバーすると、ECMが壊れる可能性がありますので十分ご注意ください)。高域が立ち上がり驚くほどクリアなサウンドになると思います。

そういったわけで、今まで使用してきたプラグインパワー方式をやめて、今回ファンタム電源供給のマイクをECMで作ってみようと思いました。

ECMのファンタム電源化(アンバランス出力)

それでは、ECMを+48のファンタム電源で駆動させる方法をご紹介します。これから紹介する内容は、こちらの記事を大いに参考させていただきました。

ECMのファンタム電源供給回路

ECMをファンタム電源で駆動させるためには、次のような回路で実現可能です。ただし、この回路はアンバランス出力であることにご注意ください。

図❶ ECMのファンタム電源供給(アンバランス)回路図
図❶ ECMのファンタム電源供給(アンバランス)回路図

「アンバランス出力だとノイズ拾いやすいんじゃないの?」と思うかもしれませんが、シールド対策をしっかり行えばほとんど問題ありません。とくにECMカプセルの部分のシールド対策が重要になります。シールド対策のやり方は後半で解説します。

そもそも、シールド対策をしっかりしていないのに、いくらバランス出力してもノイズを拾ってしまいます。また、今回紹介する回路図は、ご覧の通り部品数がとても少なくて済みます。コンパクトさとシンプルさにおいて、これ以上の回路は存在しないでしょう。

どうしてもバランス出力のマイクでなければという方は、参考になりそうな回路を作ったので記事の最後でご紹介いたします。

さて、図❶は「正極側が正相となるエレクトレットマイク」のための回路図になります。一方で「バックエレクトレット方式のECMは負極側が正相」です。バックエレクトレットECMを使う場合は、次の回路図を参考にしてください。

バックエレクトレット型ECMのファンタム電源供給回路

図❷ バックエレクトレット型ECMのファンタム電源供給(アンバランス)回路図
図❷ バックエレクトレット型ECMのファンタム電源供給(アンバランス)回路図

図❶も図❷もほとんど同じ回路図ですが、HOTとCOLDの位置が異なります。これらの位相の問題はとても重要で、複数マイクを使ったときにそれぞれのマイクの位相が合ってないと、大きなトラブルの原因になります。少しややこしいですが、お使いになるECMの位相をデータシートなどでよく確認しておいてください。

回路図の解説

それでは回路図の解説を行います。

回路図のRの値は、ECM端子間が10V程度になるように設定します。秋月電子通商で手に入るWM-61A相当品の場合ですと、47kΩの抵抗を使うと約10Vに設定できます。

カップリングコンデンサは、出力先の入力インピーダンスが600Ωまでを考えて10uFに設定しました。このときカットオフ周波数は26.5Hzになります。また、ファンタム電源は48Vですので、50V以上の耐圧のコンデンサを使うようにしてください。

フォーリーフのEB-H600を使う場合は、バックエレクトレット型のECMですので図❷の回路図で組みます。ECM端子間が10V程度になるようにRを設定すると、150kΩほどの抵抗が必要になります。

この記事ではフォーリーフのEB-H600を使って、ファンタム電源供給のピンマイクを作っていきます。フォーリーフのECMは秋月電子通商で購入できます。

フォーリーフのEB-H600とEC-H600
フォーリーフのEB-H600とEC-H600

EB-H600はバックエレクトレット型ですが、EC-H600は通常のエレクトレット型になりますのでご注意ください。詳しくはフォーリーフのサイトでデータシートをご確認ください。

もちろん位相の問題と抵抗Rを適切に設定すれば、他のECMでも同じように制作できるはずです。ぜひご参考になさってみてください。

音響機材について

当然ですが、本記事で制作するマイクを使うには、ファンタム電源を供給できる音響機材がないといけません。私は、ZOOMのH5というハンディレコーダを使っています。自転車配信の際に自作のピンマイクを使いますので、H5を自転車のトップチューブにマウントしています。台座は3Dプリンタで自作です。また、スポンジを中間にはさんで振動吸収対策も行っています。さらに、マジックテープで脱着できるようにH5の底を改造しています。

ZOOMのH5を自転車にマウント
ZOOMのH5を自転車にマウント

このZOOM H5は、2chのXLRコネクタを装備しており、ファンタム電源供給が可能です。ローカットフィルタやリミッター、コンプレッサーといった機能も備わっています。また、オーディオインターフェースになることも可能で、スマートフォンに接続してライブ配信機材としても使えますのでオススメです!

ファンタム供給ECMピンマイクのつくり方

それでは実際に、EB-H600を使ってファンタム供給できるECMピンマイクを作っていきたいと思います。

ECMカプセルの加工

マイクケーブルとECMをはんだ付けし、φ2mmの熱収縮チューブで絶縁します。

マイクケーブルとECMをはんだ付け、熱収縮チューブで絶縁
マイクケーブルとECMをはんだ付け、熱収縮チューブで絶縁

マイクケーブルは、秋葉原のTOMOCA電気で購入した、モガミのφ約3mmの2芯ケーブルを使用しました。ほどよい柔らかさと耐久性を備えていて、ピンマイクにピッタリのケーブルだと思います。

次に、ECMカプセルを絶縁するために、φ7mmの熱収縮チューブをかぶせます。ECMの負極とアルミカプセル導通しているため、シールド用の銅箔を被せるには絶縁が必要になります。

ECMカプセルを絶縁
ECMカプセルを絶縁

銅箔でマイクを覆い、マイクケーブルのシールドの撚り線と接触させます。

銅箔とシールドを導通させる
銅箔とシールドを導通させる

このようにしっかりECMの周りをGND電位に落とし、シールドします。

銅箔で覆う
銅箔で覆う

さらに、φ7mmの熱収縮チューブで銅箔が動かないようにします。

銅箔が動かないようにする
銅箔が動かないようにする

XLRコネクタの加工

次に、XLRコネクタ側の作業になります。回路図の通り、抵抗とコンデンサを間違えないように配線しましょう。

抵抗とコンデンサの配線
抵抗とコンデンサの配線

お金に余裕があればノイトリックのXLRコネクタがオススメです。ネジを使わずに分解できますし、見た目もカッコいいです!

マイクケーブルが細すぎるので、スーパーXを根本に充填して固定しました。また、根本にも熱収縮チューブを少しまいて、マイクの色と合わせて識別しやすいようにしました。

XLRコネクタ
XLRコネクタ

こんな感じで、EB-H600を使った2つのピンマイクをつくってみました。

ファンタム電源供給のピンマイクの完成
ファンタム電源供給のピンマイクの完成

2つマイクを使えば、LRのステレオ収録にしたり、モノミックスで音量バランスを整えたりできます。左右の襟にそれぞれのピンマイクを付けて、自転車配信で遊んでみます。

ちなみに、自転車配信では風切対策としてCOMICAのウィンドジャマーを使っています。また、ピンマイクを使う場合はクリップを使用します。

▼ ウィンドジャマーの自作も可能です。

【おまけ】アンバランス・バランス変換ボックス

実は山水のST-71のトランスを使って、バランス出力のピンマイクも作りました。しかし、アンバランス・バランス変換ボックスが少し大きいため、自転車配信の現場では使いづらくお蔵入りになってしまいました。先に説明したとおり、マイクカプセル部分のシールドをしっかり施せば、アンバランス回路でも滅多なノイズを拾うことはありません。とはいえ、せっかく作ったアンバランス・バランス変換ボックスなので、この記事で紹介しておきます。

こちらがその回路図です。バックエレクトレット型のEB-H600を使うために設計したものですので、通常のECMを使う場合はトランスの3番と5番を逆にしてください。

ECMバランス出力の回路図
ECMバランス出力の回路図

RLの値はECMの両端電圧が10V程度になるように設計してください。

600Ωトランスの高負荷をドライブするために、5532のようなオペアンプが必要です。

個人的にはオペアンプに2114を使うことをオススメします。5532よりもクリアな音質で、MUSE01と引けを取りませんでした。そして値段も安いので、2114が手に入るようでしたらぜひ試してみてください。

下の写真のように3Dプリンタ作ったケースに入れてみました。その後、ケースのシールド対策としてアルミテープを貼っています。また、ECMはステレオミニ化して入れ替えられるようにしています。

アンバランス・バランス変換ボックス
アンバランス・バランス変換ボックス

▼ ケースのモデルはThingiverseで公開してますので、よろしければご参考になさってみてください。

この記事を書いた人:
記事に関するご質問などがあれば @mopipico までお寄せください。
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