ABSで印刷した造形物をなめらかにする方法〜積層痕がキレイに消えます
熱溶解積層法(FDM)の3Dプリンタで作った作品は、フィラメントの積み重ね部分がどうしてもギザギザになってしまいますよね。そこで、この記事では3Dプリンタで作った造形物の積層痕をキレイに消す方法をご紹介します。
実は「アセトン」という薬品を使って、とても簡単に造形物をなめらかにできちゃうんです!
つかうもの
最初に、この記事でつかうものをご紹介します。 ABSフィラメント、アセトン、ポリプロピレンのタッパー、キッチンペーパー、アルミ箔をご用意ください。
ABSフィラメント
印刷に使うフィラメントは必ずABSを選んでください。PLAフィラメントで印刷してしまうと、アセトン処理でなめらかにすることができません。
私は初のABSフィラメントでしたが、こちらのPxmalionのABSフィラメントでうまく印刷できました。
下の写真のように、しっかり梱包されて送られてくるので安心です。
3Dプリンタ
私が使っている3DプリンタはEnder3 V2です。磁気で取り外しがラクなビルドプレートへ変更してます。また、滑らかなローラーの上にフィラメントを置くと驚くほど送り出しがスムーズになり、フィラメントが絡まることも印刷に失敗することもなくなりました。
エンクロージャー
ABS樹脂で印刷するには周囲の温度管理が難しく、エンクロージャーなしでは上手に印刷できません。Ender3 V2が丸ごと入るエンクロージャーをAmazonで購入しました。3Dプリンタ内の温度を高く維持でき、ABSがおどろくほどキレイに印刷できるようになりますよ。
アセトン
アセトンはネイルカラーなどを落とすために使われる溶剤です。水やアルコール、クロロホルム、エーテルなど、ほとんどの油脂をよく溶かすそうです。
また、常温で高い揮発性を有し、強い引火性があるそうです。
つまり、火のそばでは絶対に使っちゃダメってことですね。これから紹介する方法も、必ず換気の良いところで行ってください。
Amazonでこちらのアセトンを購入しました。
ネイルリムーバーとして販売されているものですが、成分は「アセトン」のみになってますので問題なかったです。
ポリプロピレンのタッパー
100円ショップなどで「ポリプロピレン」のタッパーやケースをご用意ください。造形物がまるまる入る大きさでフタが閉まるものが必要になります。
似たような素材にポリエチレン(PE)がありますが、アセトンで溶けてしまい大変危険です。必ず「ポリプロピレン」を選んでください。フタなども「ポリプロピレン」であることが大事です。
キッチンペーパーとアルミ箔
その他に、キッチンペーパーとアルミ箔をご用意ください。ご家庭にあるもので大丈夫です。
アセトンとは
購入したアセトンの使用方法の説明をよく読んでみますと、次のように書かれてます。
アセトンの使用方法
ネイルカラーのオフ
- コットンに適量を含ませネイルカラーの上に乗せ、しばらく押さえます。
- そのままネイルカラーをふき取ります。
ソフトジェルのオフ
- リムーバーの浸透を良くするため、爪表面が白くなる程度にファイルで優しくこすります。
- 適量のリムーバーをコットンに含ませ、爪の上にのせます。それぞれの指をアルミホイルで包み約15分浸透させます。
- ジェルがやわらかくなったら、プッシャーやオレンジスティックで優しくオフします。
- ジェルが取れにくい場合は無理にはがさずに、②〜③をくり返してください。
と、このような感じでアセトンの使い方が書かれていました。 もちろん「火気厳禁」の文字も!
恐る恐る、フタを開けて匂いを嗅いでみます。
匂いは、シンナーのようなアルコールのような刺激臭です。口が小さいためか、匂いがすぐに部屋いっぱいに充満する感じではないですね。
とは言え、フタを開けっ放しにしないよう、十分な換気を行いながら使用しましょう。
アセトンでABSの造形物をなめらかにする
さて、ここからが本題です。アセトンをつかってABSフィラメントで印刷した造形物をなめらかにしていきます。 まずは、造形物を3Dプリンタで印刷してください。ここではBlenderでおなじみのスザンヌさんを作ってみました。
ちなみに、最近はFusion360をやめてBlenderで印刷物をモデリングするようにしてます。Blenderでモデリングすると楽しいですよ。
アセトン処理の手順
さて、タッパーにキッチンペーパーを写真のように敷き、アセトンを適量たらします。キッチンペーパーが染みる程度でOKです。
次に、キッチンペーパーの上にアルミ箔を敷き、その上に造形物が直接アセトンに触れないようにそっと置きます。そしてフタをします。
そのまま3時間ほど放置します。
3時間後、フタを開けてみます。するとこのようにつやつやな状態になってます。積層痕はまだ残ってますが、これで大丈夫です。
さいごに、乾燥作業にはいります。造形物は柔らかい状態ですので、ぜったいに手で触れないようにしてください。風通しの良いベランダなどで、造形物をしばらく乾かします。
以上でアセトン処理は完了です。アセトン処理前と後で造形物のなめらかさを比較してみましょう。
アセトン処理前のようす
こちらはアセトン処理する前のようすです。積層痕があり、光沢はありません。
アセトン処理後のようす
こちらがアセトン処理した後の造形物です。 いかがでしょうか?積層痕が見事に消えてます。表面もなめらかで光沢があります。「おもちゃ屋で購入したモノ」とウソついてもバレない(笑)くらいにキレイになりました。
今回、はじめてアセトン処理を行ってみましたが大成功でございます。アセトンの値段も安く、処理も簡単でとても気に入りました。これからガンガン使ってツルツルに仕上げます!
くどいようですが、くれぐれもABSフィラメントで印刷することをお間違えなく!
ABS樹脂はアセトン蒸しが効くだけでなく、耐熱性もPLAフィラメントより高いです。ABSフィラメントによっては沸騰したお湯につけても変形しない強さを持ったものがあります。ぜひこちらの記事も合わせてご覧ください。