ホワイトノイズをアナログ回路で作る3つの方法|ツェナーダイオード、オペアンプ、トランジスタ
この記事では、ホワイトノイズをアナログ電子回路で作る方法をご紹介いたします。具体的にはツェナーダイオードとオペアンプ、トランジスタで作る3つの方法をご紹介いたします。
ホワイトノイズはアナログシンセサイザーなどにも応用できる回路です。また、スピーカーの周波数測定試験に使ったり、環境音の雑音消しや、癒しとしてのBGMにしたりできます。ぜひご参考ください。
ホワイトノイズとは
ホワイトノイズとは、すべての周波数帯域で同じ振幅をもったノイズのことです。同じ振幅ですから、音量(ゲイン)がすべての周波数で同じになるようなノイズということです。
この世は無数の電磁波が飛び交うノイズまみれな世界ですが、いざ、キレイなホワイトノイズを作ろうと思うとこれが結構むづかしいんです。ホワイトノイズはすべての周波数帯域で均一な状態にしなければならないため、でたらめなノイズではホワイトノイズとは呼べないのです。本記事を書くにあたっていろいろ実験をくり返し、ようやくホワイトノイズらしい音、波形になりましたのでご紹介いたします。
ホワイトノイズを発生できる3つの電子回路
ホワイトノイズを発生できる3つの電子回路をご紹介いたします。
ツェナーダイオードを使ったホワイトノイズ発生器
はじめに、ツェナーダイオードによるホワイトノイズ発振器のご紹介です。
下図のようにツェナーダイオードに電圧をかけるとホワイトノイズが発生します。正し微弱信号なのでトランジスタなどで増幅する必要があります。
巷の回路を少し改造したものが次になります。ツェナーダイオードによるホワイトノイズ発生器の回路図です。
確かにホワイトノイズが発生したのですが、同時にリップルのようなノイズも混入してしまいました。1N5231Bは5.1Vのツェナーダイオードです。それ以下の電圧ツェナーだと発振しませんでした。また、もしかしたらもっと高い電圧のツェナーダイオードを使うとキレイなホワイトノイズが生成できるのかもしれません。
BC108はNPNのシリコントランジスタです。金属パッケージに入った古いトランジスタですが、ゲルマニウムトランジスタではありません。シリコンです。2SC1815でも試しましたが、キレイなホワイトノイズにならないのでBC108を指定しておきます。BC108はギターエフェクタのFuzz Faceに使われるトランジスタとして有名です。
オペアンプを使ったホワイトノイズ発生器
次に、オペアンプによるホワイトノイズ発生器の回路図を紹介します。下図のように100Ω以下の低い抵抗で反転入力と非反転入力をつなぎます。そして、非反転入力をアースへ落とします(オペアンプを単一電源で動かしている場合は、アースではなくバイアスへ接続)。
これでオペアンプがホワイトノイズ発生器になります。10kΩのフィードバック抵抗が大きすぎると、ホワイトノイズが発生しなくなるので注意しましょう。この回路の出力信号は小さいので、後段に増幅回路を設けるのが実用的です。
さて、この回路をブレッドーボードで組み立てて、発生したノイズの周波数特性を調べてみました。オペアンプをそれぞれ「NJM5534」「TL072」「NJM4558」「NJM022」と入れ替えて周波数特性の違いを調べました。すると、「TL072」>「NJM4558」>「NJM022」の順で特性がホワイトノイズに近くなり、残念ながら「NJM5534」はノイズが発生しませんでした。
こちらは一番ホワイトノイズに近づいたTL072の周波数特性です。
高域になるにつれゲインが下がるので、少しこもった音質のホワイトノイズでした。なにか改善の方法があるかもしれませんが、オペアンプでのホワイトノイズ発生回路はここまでとしておきます。
トランジスタを使ったホワイトノイズ発生器
最終的に、トランジスタを使ったホワイトノイズ発生器をご紹介します。実はトランジスタによるホワイトノイズが一番キレイでした。回路図の前段のトランジスタがホワイトノイズ発生回路で、トランジスタのベース-エミッタ間に逆方向電圧をかけることでホワイトノイズを発生させています。真面目に電子回路設計をやられている方には怒られるかもしれませんが、アナログシンセサイザーなどではよく使われるている方法です。
前段で発生したホワイトノイズはやはり微弱信号なので、後段のトランジスタで信号を増幅させています。さらに、実用的にするため出力にバッファ回路を設けたホワイトノイズジェネレーターを作ってみました。詳しくは下記の記事をご覧ください。
トランジスタは、2SC1815を指定しておきます。他のトランジスタだとノイズが発生しない場合があります。また、2SC1815でも個体差がありますので、いくつかのトランジスタを試して一番元気に発振する石を探しましょう。
前段のベース-エミッタ間の電圧を測定すると、8.27Vの定電圧になりました。このことから、9V電池で動かすにはギリギリすぎるため12V以上の電圧で使うことをオススメします。また、回路を少し変更すれば2SA1015でも作ることができます。
発生したホワイトノイズの周波数特性を調べたグラフが下図です。
ご覧のとおり、キレイなホワイトノイズの周波数特性です。20Hzから20kHzまでほぼフラットな特性なので、オーディオのような低周波機材で使う分には問題ないと思います。
キレイなホワイトノイズが発生できてうれしかったので、銅板をエッチングして基板を作り、ブレッドボードで使いまわしができるホワイトノイズ発生器モジュールを作ってみました。
2SC1815で作ったホワイトノイズの音
▼ 下記リンクから、2SC1815で作ったホワイトノイズの音が聴けます。
▼ こちらはパソコンで作ったデジタルのホワイトノイズです。
アナログとデジタルのホワイトノイズを聴き比べてみてください。違いが分かりますでしょうか?(笑)
ピンクノイズについて
ホワイトノイズは「シャー」といった高音のノイズ目立つのがホワイトノイズの特徴です。一方でホワイトノイズと似て非なるものに「ピンクノイズ」があります。ピンクノイズの場合は「ザー」といった感じでホワイトノイズよりは暗い印象のノイズです。
▼ ピンクノイズの音
いかがでしょうか?ピンクノイズは滝の音に似ていませんか?ピンクノイズとは、周波数に反比例してパワーを減衰させた音です。そのことから、ピンクノイズを「1/fノイズ」とも呼びます。「1/fゆらぎ」という名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。実は、自然界には「1/fノイズ」が多く存在しています。滝の音も1/fノイズに近い音です。
ところで正確なピンクノイズをアナログ回路で作ろうとすると、とっても難しいです。こちらの記事で実験しましたのでご参考ください。
ホワイトノイズマシン
ここまで、電子工作によるホワイトノイズについて説明してまいりました。もしかしたら、電子工作には興味はなく、安眠や騒音対策としてホワイトノイズ発生器のグッズをお探しの方がいらっしゃるかもしれません。
そんな方には、ホワイトノイズマシンという商品があります。3000円〜5000円の値段で購入できます。Amazonでとくに人気のあるホワイトノイズマシン製品をのせておきますので、ご参考になさってみてください。
ホワイトノイズマシンには、「ホワイトノイズ」をはじめ「雨の音」や「焚き火」の音などの自然音が収録されており、それらの音を内蔵スピーカーから出力します。耳障りな音や、気が散る騒音をかき消してくれるので、快眠をサポートしたり、作業に集中できるようになります。
また、ノイズキャンセリングを内蔵したワイヤレスイヤホンも流行ってますので、騒音にお悩みの方はそちらを検討してみるのも良いかもしれません。こちらはAmazonでとくに人気のAnkerのワイヤレスイヤホンです。
最後に
ホワイトノイズ発生器があると、音響での実験やテストに何かと便利です。ぜひ皆さんも、ホワイトノイズ発生器を作ってみてくださいね。キットも販売されてますのでご参考に。