CRパッシブノイズフィルター「DESERT MOON」の開発
ギターやベースのノイズ、とくにストラトキャスターやジャズベースなどのシングルコイルのピックアップノイズを低減できる機材を作ってみました。その名も「DESERT MOON」。こちら無電源で動く機材になります。仕組みはCRローパス(ハイカット)フィルタでして、エフェクタを挟まず、ギター出力後の初段階で繋いでもらう形になります。ロータリースイッチによってコンデンサ(C)の値を切り替えることで、音に影響しないぎりぎりのラインを狙った高域ノイズの低減対策が実施できます。
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カットオフ周波数 (fc)
CRローパスフィルタのカットオフ周波数 (fc) は、次式で計算することができます。
$$ fc = \frac{1}{2πCR} $$
ただし、カットオフ周波数は、-3dB地点での周波数であることに注意してください。
Rの抵抗値を1kΩに固定して、Cのコンデンサの容量を変化させた時のカットオフ周波数をシミュレーションしてみました。
R(Ω) | C(pF) | fc(Hz) |
---|---|---|
1000 | 470 | 338k |
1000 | 560 | 284k |
1000 | 680 | 234k |
1000 | 820 | 194k |
1000 | 1000 | 159k |
1000 | 1200 | 132k |
1000 | 1500 | 106k |
1000 | 1800 | 88k |
1000 | 2200 | 72k |
1000 | 3300 | 48k |
1000 | 4700 | 33k |
1000 | 10000 | 15k |
例えばR=1k、C=1000pFでのカットオフ周波数は194kHzであり、可聴周波数帯域には影響しないように思われます。ですが、実際に回路を組んで実験してみますと、明らかに高域が落ちることがわかります。つまり可聴周波数帯域に影響するのです。
この原因が不思議で考えていたところピックアップのインピーダンスの影響が考えられました。一般的にギターやベースのピックアップのインピーダンスは数百キロΩと呼ばれています。
ピックアップのインピーダンス
以前に、Jazz bassのネックピックアップを測定したことがあります。その結果がこちらになります(シリーズ接続つまり、ハムバッキングでの測定の可能性がありますので、あくまでも参考程度になさってください)。
オシレーターとミリバルを使って、分圧抵抗によってインピーダンスを測定計算した結果です。
項目 | 値 |
---|---|
入力電圧 | Vpp = 1V |
測定抵抗 | 10kΩ |
測定日時 | 2023.5.12 |
気温/湿度 | 20.5℃ / 55% |
周波数(Hz) | 電圧 (V) | インピーダンス(kΩ) |
---|---|---|
20 | 0.34 | 5.2 |
30 | 0.34 | 5.2 |
40 | 0.34 | 5.2 |
50 | 0.34 | 5.2 |
60 | 0.34 | 5.2 |
70 | 0.345 | 5.3 |
80 | 0.345 | 5.3 |
90 | 0.35 | 5.4 |
100 | 0.355 | 5.5 |
200 | 0.385 | 6.3 |
300 | 0.44 | 7.9 |
400 | 0.485 | 9.4 |
500 | 0.54 | 11.7 |
600 | 0.585 | 14.1 |
700 | 0.625 | 16.7 |
800 | 0.66 | 19.4 |
900 | 0.695 | 22.8 |
1000 | 0.72 | 25.7 |
2000 | 0.865 | 64.1 |
3000 | 0.92 | 115.0 |
4000 | 0.94 | 156.7 |
5000 | 0.955 | 212.2 |
6000 | 0.96 | 240.0 |
7000 | 0.965 | 275.7 |
8000 | 0.97 | 323.3 |
9000 | 0.975 | 390.0 |
10k | 0.975 | 390.0 |
20k | 0.965 | 275.7 |
30k | 0.925 | 123.3 |
40k | 0.88 | 73.3 |
50k | 0.82 | 45.6 |
60k | 0.76 | 31.7 |
70k | 0.71 | 24.5 |
80k | 0.65 | 18.6 |
90k | 0.62 | 16.3 |
100k | 0.58 | 13.8 |
10kHzあたりでピークを迎え、400kΩものハイインピーダンスになります。1kHzではぐんと下がり25kΩ、さらに100Hzでは5kΩ程度と低いです。可聴帯域周波数を20kHzまでとすると、3kHz〜20kHzの範囲ではインピーダンスが100kΩ以上であることが分かります。ちなみに3kHzというのは人間にとって聞き取りやすい周波数帯域であり、赤ちゃんの鳴き声がこの辺に当たるそうです。
カットオフ周波数の再計算
もう一度こちらの回路図確認しましょう。ピックアップのインピーダンスもCRローパスフィルタの形成に影響すると考えることができます。
その場合、R_PUとRの直列合成値で再度計算してみることにします。3kHz〜20kHzの範囲ではインピーダンスが100kΩ以上であることから、仮に、100kΩで再計算してみました。
R(Ω) | C(pF) | fc(Hz) |
---|---|---|
100k | 470 | 3.3k |
100k | 560 | 2.8k |
100k | 680 | 2.3k |
100k | 820 | 1.9k |
100k | 1000 | 1.6k |
100k | 1200 | 1.3k |
100k | 1500 | 1.1k |
100k | 1800 | 884 |
100k | 2200 | 723 |
100k | 3300 | 482 |
100k | 4700 | 339 |
100k | 10000 | 159 |
このような結果になりました。R=100kΩ、C=470pFの時でfc=3.3kHzというのは低すぎる気がします。なぜならトーンのようなこもった音色になりそうだからです。しかし、実際こもって聴こえるようになるのは、Cの値を4700pF以上にしたあたりです、ですから、インピーダンスの抵抗値をそのまま当てはめるのも何か違う気がします。確立した理論を形成できませんでしたが、ここまでが今のところの理屈になります。
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