オクターバー回路を考える|絶対値回路と差動回路
オクターバー回路を考える|絶対値回路と差動回路
絶対値回路で作るオクターバー
絶対値回路を使った2倍音発生器(オクターバー)の紹介をする。絶対値回路とは、オペアンプで実現する全波整流回路である。この回路に信号を通すと、1オクターブ上がったような音が作れる。ただし、キレイなサイン波を信号とした場合であり、ギターなどの音を入力した場合は、1オクターブ上がった音に聞こえない場合もある。だから、エフェクターのオクターバーとは少し違うが、2倍音を発生させる回路であることには間違いない。
この回路は、エフェクター内での音色の味付けとして大いに利用できる。
回路図1
絶対値回路の案1
最初は、こちらの記事で紹介した絶対値回路をもとに入力バッファ付け加えてモジュール化しようと考えた。オペアンプの入力インピーダンスが低いため、ギターなどのハイインピーダンスの楽器を直接受けることができずどうしてもバッファーが必要だったのだ。
するとこのような大袈裟な回路になってしまう。
そこで、もっとシンプルに全波整流できないだろうかと回路図を探していたところ、こちらのTEXAS INSTRUMENTSの資料を発見した。
高精度絶対値回路
絶対値回路がもっとシンプルに作れるようなので試さない手はない。さっそく、この中からいくつか回路を組んで実験した。そうして、次の回路でモジュール化することにした。
回路図2
Minify絶対値回路
この回路は、非反転入力を使っているためインピーダンスを高くすることができる。よって、オペアンプ1つだけでハイインピーダンス楽器の信号を全波整流できるのだ。
絶対値回路モジュール
銅基板をレジストペンで配線し、エンチングして作った絶対値回路モジュールだ。モジュールにしておくと、ブレッドボードですごく使いやすくて実験が捗る。
サイン波の全波整流
さて、オシレータで1kHほどの正弦波を入力した時の出力をオシロスコープで観察した。写真のようにマイナス側の波形が反転して、全波整流になっている。ただし、山の大きさが均一でないので正確な意味での絶対値回路としては改良が必要だが、エフェクターなんかで使う分にはこれで十分。
差動回路でオクターバー
Phase Splitterと組み合わせて、今回はトランジスタの差動増幅回路を使ったオクターバーを作ってみた。
回路図
Differential Amplifier Octaver Schematic
こちらがその回路。2つのトランジスタを向き合わせて差動増幅回路の形にし、エミッタフォロワで出力を取り出している。エミッタフォロワは電圧ではなく電流増幅回路なので信号の増幅率は約1倍となる。
IN1とIN2はそれぞれ逆相になるような信号を入力する。本来、差動増幅回路はそれぞれ逆相の信号を入れると足し合わされて元の信号の2倍の信号が出力されるはずだが、この回路の場合は全波整流の波形となって出力される。なぜそうなるのか、その仕組みはよくわからない。
実際にPhase Splitterと組み合わせてベースやギターを入力すると、ピッキングハーモニックスのような1オクターブ上の音が発生する。2倍音を多く含んだ信号といった方が良いかもしれない。正弦波に近い信号を入力すれば、アッパーオクターバーのような効果が得られる。
ただし音は歪んでしまう。元の入力波形を全波整流の形にしているため歪んでしまうのは仕方ないのかもしれない。どうせ歪み系エフェクターに使われるのだからこれで良いのだと納得しよう。
回路図のCとRは音を聞きながら決定した。Cは回路を安定させると同時にローパスフィルタの役割になる。ベースの音色に最適化したのでギター向きではない。ギターで使う場合は、Cの容量をもう少し小さくすると良いだろう。
ここら辺のローパスフィルタが作用しているためか、オペアンプの絶対値回路で作ったオクターバーとは随分違う結果となった。
さて、今回もまた差動増幅回路をモジュール化してみた。
Phase SplitterとDifferential Amplifier Octaverのモジュール化
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