ラズパイのAirPlay化
自宅のオーディオ環境を快適にするため、Raspberry Piをオーディオサーバー化してみた。具体的にはラズパイでAirPlayを使えるようにし、iPhoneやMacからWiFi経由で音楽を流せるようにしていく。実際やってみたところ、すごく快適で便利になったのでその設定方法を記録として残しておく。
shairport-syncのインストール
shairport-sync とは、なんとAppleのAirPlayをサーバーとして実現してくれるプログラムだ。ただしAirPlayサーバーは音声のみとなっている。
shairport-sync をインストールする前に、いろいろなライブラリをインストールする必要がある。まずはapt-getを最新のものにしておこう。なぜなら最新にアップデートしておかないとライブラリが見つからなかったりするからだ。
$ sudo apt-get update && sudo apt-get upgrade
そして必要なライブラリをまとめてインストールしていく。
$ sudo apt-get install git autoconf libdaemon-dev libpopt-dev libconfig-dev libasound2-dev libpulse-dev libavahi-client-dev libssl-dev libsoxr-dev
たくさんライブラリを入れたのは良いが、どんな役目があるのか分かっていないとモヤっとするので一応ざっくり調べてみた。
ライブラリ名 | 役割 |
---|---|
git | gitコマンドを使えるようにする |
autoconf | configureを自動で生成してくれる |
libdaemon-dev | 軽量な C ライブラリで、UNIX デーモンを書きやすくしてくれる |
libpopt-dev | コマンドラインのパラメータによって変数を設定できるようにする |
libconfig-dev | configファイルの構造をパースして扱いやすくしてくれる |
libasound2-dev | ALSAアプリケーション開発に必要な共有ライブラリ |
libpulse-dev | PulseAudio開発に必要なライブラリ |
libavahi-client-dev | ローカルネットワーク上のサービスやホストを検索可能にする |
libssl-dev | OpenSSLを使えるようにする |
libsoxr-dev | リサンプリングして音質を良くしてくれる |
ALSAはAdvanced Linux Sound Architectureの略。
準備が整ったところでいよいよ本命の、 shairport-sync をインストールする。次のように、Gitでクローンしよう。
$ git clone https://github.com/mikebrady/shairport-sync.git
そしてフォルダへ移動し、コンパイル & インストールする。
$ cd shairport-sync
$ autoreconf -i -f
$ ./configure --sysconfdir=/etc --with-alsa --with-pa --with-avahi --with-ssl=openssl --with-metadata --with-soxr --with-systemd
$ make && sudo make install
shairport-sync をインストールできたところで、今度はAirPlayサーバーの設定をする。管理者権限で /etc/shairport-sync.conf を開き、次のように変更する。ラズパイの基板に付いているオーディオミニ端子からラインアウトする場合はこれだけOK。
general =
{
name = "AirPi"; // コメントアウトしてAirPlayの名前を決めよう
...
interpolation = "soxr"; // soxrを使うと音質が良くなる、ただしCPU負荷も高くなる
...
ラズパイ起動時に自動でAirPlayサーバーが動くようにしたいので、次のようにサービスに登録させておいた。
$ sudo service shairport-sync start
$ sudo systemctl enable shairport-sync.service
ラズパイを再起動して、AppleデバイスからAirPlay (登録名:AirPi) が選択できるようになっていれば成功だ。ラズパイからの音量が小さい場合は、 alsamixer コマンドで音量設定を変えられるので試してみよう。
USB DACからの再生
ラズパイ搭載のオーディオミニ出力は、残念ながら音が悪い。ラズパイ自身の機械的ノイズを受けやすいのだ。そこで、USB DACを使ってみた。
USB DACをラズパイへ繋ぐ場合、ラズパイの設定を少し変える必要がある。まず、USB DACをラズパイに繋いでラズパイを再起動する。そして、$ aplay -l コマンドでオーディオデバイスを確認する。すると、次のようにUSB Audioが確認できるはずだ。
**** List of PLAYBACK Hardware Devices ****
card 0: ALSA [bcm2835 ALSA], device 0: bcm2835 ALSA [bcm2835 ALSA]
Subdevices: 6/7
Subdevice #0: subdevice #0
Subdevice #1: subdevice #1
Subdevice #2: subdevice #2
Subdevice #3: subdevice #3
Subdevice #4: subdevice #4
Subdevice #5: subdevice #5
Subdevice #6: subdevice #6
card 0: ALSA [bcm2835 ALSA], device 1: bcm2835 IEC958/HDMI [bcm2835 IEC958/HDMI]
Subdevices: 1/1
Subdevice #0: subdevice #0
card 0: ALSA [bcm2835 ALSA], device 2: bcm2835 IEC958/HDMI1 [bcm2835 IEC958/HDMI1]
Subdevices: 1/1
Subdevice #0: subdevice #0
card 1: Device [USB2.0 Device], device 0: USB Audio [USB Audio]
Subdevices: 1/1
Subdevice #0: subdevice #0
この状態で何か音声データを鳴らしてみる。たとえば次のように。
$ aplay -D plughw:1,0 hoge.wav
無事、wavファイルの音声を確認できた。上記の設定の、plughw を環境によっては hw にすると良い。そのあとの数字は、 $ aplay -l で得られた情報を元にしていて、 plughw:card番号, Subdevice番号 となっている。
さらに、AirPlayでもUSB DACから出力されるように、 /etc/shairport-sync.conf も次のように書き換えた。
alsa =
{
output_device = "plughw:1,0"; // "hw:1,0"にすると音飛びしてしまう
...
なぜかhw に設定すると音飛びしてしまうが、plughw にしたら問題なくキレイに再生できた。やはりラズパイ内臓のラインアウトより、USB DACの方があきらかにタイトでパワフルでクリアなサウンドになる。安物のUSB DACだろうとあなどれない。
後にさらなる高みを目指すため?、ハイレゾまで対応しているI2S通信のDACを試してみた。正直、DACによる音質の違いまでは分からなかった。
32bit 384kHz DAC完成基板 Raspberry Pi 動作OK。DAC内部のデジタルフィルター演算方式変更スイッチを搭載。
Amazonちなみに、ハイレゾはオシロミュージックで大活躍する。オシロミュージックの音声を、オシロスコープのXYモードで再現できるか試してみた。この時、低いサンプリング周波数のDACを使っていたとので、細部の表現がつぶれてしまっている。もっとサンプリング周波数をあげれば、オリジナル動画と同じキレイなアニメーションが表示されるはず。
アンプ選び
100dB以上ある能率の大きなスピーカーを使っているので、1Wのデジタルアンプでも室内なら十分な音量で鳴らせる。1Wのアンプなら、電池駆動も余裕でできたり。
スピーカー製作の記事はこちら
音響実験のために、オシレーターアプリを作ってみたので宜しければどうぞ(無料です)。

先ほどのオシレーターアプリでLRの両方からサイン派を出し、オシロスコープでリサージュ図形に歪みがないか確認したりできる。
1Wのデジタルアンプでは流石に低音が物足りなく感じたので、10Wのデジタルアンプを試してみた。チップはYAMAHAのYDA-138-Eで、1000円台で買える台湾製のデジタルアンプ。
安くても侮るなかれ。部品の1つ1つが驚くほどしっかりしていて、とても1000円台とは思えない。スパンッ!スパンッ!と立ち上がりが早い感じの音で、デジタルアンプならではの低音の伸びを感じられた。
最後に
そもそもこのプロジェクトはMacやiPhone、iPadの音を1つのモニタースピーカーで聴こうとしたとき、接続切り替えなどが面倒なので、なんとか簡単にならないかと考え出したのがきっかけ。当初は次のシステムを構築するつもだった。
Bluetoothレシーバーをデュアルで繋いだり、パッシブミキサーで実験してみたり、ラインセレクターを考えたりと色々やってみた。しかしシステムは複雑になるばかりでどうも納得できるものではなかった。そんなとき、ラズパイをAirPlayサーバーにできると知り、これだと思って取り掛かったのがこのプロジェクトだ。
Apple製品を使う限りではこの上なく便利でシンプルなシステムが構築できたと思う。それにAirPlayならBluetoothとは違いロスレスでサウンドデータを送れる。そして何よりもコードレスになって、ノートPCの移動が快適になった。
この記事で扱った関連製品
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AmazonRaspberry Piの参考書
本書は、全世界で多くのユーザーの支持を集めているマイコンボード「Raspberry Pi」を使いこなすためのレシピ集です。ハードウェアの基本、オペレーティングシステムの使い方、ネットワーク接続、Pythonプログラミングの基本を紹介した上デ、実際の作品製作に必要になる、高度なPythonプログラミング、GPIO(汎用入出力)、モーター、センサー、ディスプレイなどの使い方へと解説を進めていきます。
Amazon最後まで読んでいただきありがとうございました。
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今後も有益な記事を書くモチベーションにつながりますので、どうかよろしくお願いいたします。↓↓↓↓↓↓↓