NPNシリコントランジスタで作る!Fuzz Face|2SC1815とBC108で自作エフェクター

NPNシリコントランジスタで作る!Fuzz Face|2SC1815とBC108で自作エフェクター
NPNシリコントランジスタで作る!Fuzz Face|2SC1815とBC108で自作エフェクター

この記事では、NPNトランジスタで作る!Fuzz Faceの作り方をご紹介いたします。国民的トランジスタの2SC1815を使って自作エフェクターのFuzz Faceを作ることができます。元祖のファズフェイスは、PNPのゲルマニウムトランジスタが使われていましたが、ゲルマニウムトランジスタは現在入手が困難です。シリコントランジスタでも代用できます。また、元の回路はマイナス電源で設計されてましたが、NPNトランジスタを使うことで回路がわかりやすくなり、作りやすくなりました。

この記事では2SC1815(2SC945)とBC108BのNPNシリコントランジスタを使ったFuzz Faceの制作例をご紹介してます。

Fuzz Faceについて

はじめに、Fuzz Faceの歴史をさらっておきましょう。

Fuzz Faceとは

WikipediaよりFuzz Faceの写真
WikipediaよりFuzz Faceの写真

Fuzz Faceはアービターエレクトロニクス社が1966年にを発表したエフェクタペダルです。その後の、製造会社はいろいろと変わり、今ではDunlop社がFuzz Faceを作ってます。

Fuzz Faceは、ギターの歪み系「ファズ」として人気があり、ジミー・ヘンドリックスがFuzz Faceを使用していたことはあまりにも有名でしょう。Fuzz Faceはエレキギターだけでなく、エレキベースでも使用しているミュージシャンがいるようです。

Fuzz Faceの音色

Wikipedia で紹介されている、シリコントランジスタ型のFuzz Faceのサウンドを聴くことができます。

こちらは「The Jimi Hendrix Experience」のライブ映像です。ワウペダルと、Fuzz Faceを使っているようすを見ることができます。

ファズという言葉

「ファズ」という言葉は元々、電気部品の破損やスピーカーの故障などよって発生する歪音のことだそうです。ただし、オーバードライブもディストーションもファズも、明確な定義はなく、音色の印象で決められていることが多いようです。

Fuzz Faceのトランジスタ

初期のFuzz Faceではゲルマニウムトランジスタが使われていました。その後、ゲルマニウムトランジスタの衰退とともに、シリコントランジスタへ移り変わっていきます。ゲルマニウムトランジスタとシリコントランジスタでは、歪みの音質にかなり違いがあります。そのため、初期のゲルマニウムトランジスタが使われていた初期のFuzz Faceを愛用する方も多いはずです。

WikipediaよりFuzz Faceの基板
WikipediaよりFuzz Faceの基板

Fuzz Faceはなぜ丸いケース?

Fuzz Faceの筐体が丸い形になった有名な話として、開発者のアイヴァー・アービターが、マイクスタンドの丸い台を見た時に思いついたそうです。マイクスタンドの土台は頑丈で、金属でできてますから、エフェクターに利用するにはちょうど良かったのでしょう。

2SC1815で作るFuzz Face

ここからは、実際にNPNシリコントランジスタを使ってFuzz Faceを制作した様子をご紹介いたします。

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回路図

下図はNPNシリコントランジスタに置き換えたFuzz Faceの回路図になります。国民的トランジスタである2SC1815の他、2SC945などが代替可能です。

Fuzz Face(2SC1815版)回路図
Fuzz Face(2SC1815版)回路図

番号 部品 個数 備考
C1 2.2uF 積層セラミックコンデンサ 1個 225
C2 22uF 電解コンデンサ 1個 極性あり
C3 0.01uF フィルムコンデンサ 1個 103
R1 100kΩ カーボン抵抗 1個 茶黒黄金
R2 33kΩ カーボン抵抗 1個 橙橙橙金
R3 330Ω カーボン抵抗 1個 橙橙茶金
R4 8.2kΩ カーボン抵抗 1個 灰赤赤金
POT1 1kB 可変抵抗 1個
POT2 500kA 可変抵抗 1個
Q1、Q22SC1815 GRNPNシリコントランジスタ2個

2SC1815のピン配置

2SC1815のピン配置は下図のとおりです。左からECBと並んでますので覚えて損はないです。

2SC1815のピン配置
2SC1815のピン配置

解説

二つのトランジスタを使って過激に増幅することで、音を歪ませてます。1kΩのPOTは歪み(FUZZ)を調整するものです。ただしギターからFuzz Faceへ直結で使うと、FUZZの調整がしづらいです。前段にバッファー回路を挟んでからFuzz Faceへ繋いだほうが、キレイに歪みます。

基板製作

実際にFuzz Faceのモジュールエフェクターを作ってみました。フリーソフトのKiCadを使って電子回路図を製図し、フットプリントを作成しました。その後、トナー印刷 → 転写 → エッチング → ルーター穴あけ作業で基板を制作しました。XHコネクタを取り付けて接続することで、次に紹介するBC108版のFuzz Faceと簡単に入れ替えが可能になります。

Fuzz Face製作
Fuzz Face製作

Fuzz Face製作
Fuzz Face製作

オシロスコープで波形の観察

Fuzz Faceの回路を組んでオシロスコープで出力波形を観察してみました。下の写真は、正弦波1kHzを入力した時の波形です。

正弦波1kHzを入力した時の波形
正弦波1kHzを入力した時の波形

想像通り、過激な信号増幅によってクリップされ、矩形波になってます。デューティ比を持ったPWM波形に近いですね。

下の動画はギターを鳴らした時の波形の様子です。

ギターを鳴らした時の波形
ギターを鳴らした時の波形

この動画では、ギターの1弦だけを鳴らしてます。音の減衰とともに、デューティ比がだんだん狭くなっていきます。入力信号の大きさ、つまりギターの音量によっては片側クリップのような波形になることが分かります。オペアンプのコンパレータで歪ませた音とも違くなるはずです。ここら辺が「Fuzz Faceらしさ」の音色を作り出すカギなのでしょう。

外部ノイズ対策

Fuzz Faceは回路内のインピーダンスが高いため、外部の電磁波ノイズを拾いやすいです。ですから、アルミケースに入れるなどしてシールド対策が必要になります。自作Fuzz Face基板をエフェクタケースに収納する様子を記事の後半で紹介してますのでご参考ください。

消費電流

自作したFuzz Faceの消費電流を測ったみたところ、0.8mA程度でした。9V電池を500mAhとすれば、625時間も稼働可能な計算になります。

入出力インピーダンス

Fuzz Faceの入力インピーダンスは低いようで、ギターを直結するとボリュームコントロールで大きく歪んだファズトーンから、クリーンな鈴なりサウンドまで音色を自在に操ることができます。しかし現代のエフェクターに慣れてる方だとコントロールしずらいです。その場合はバッファーやブースターなどを前段に挟むと良いでしょう。ただし、今度は歪みすぎて鈴なりサウンドを作るのが難しくなりますが(^_^;)

また、Fuzz Faceの出力インピーダンスも高めなので注意が必要です。Fuzz Faceからギターアンプへ接続する場合は大丈夫ですが、Fuzz Faceから直接録音機材へ繋ぐ場合は音質劣化が起こります。対処法としましては、DI(ダイレクトボックス)を通して録音機材へ繋ぐことで解決できます。

BC108Bで作るFuzz Face

BC108Bで作るFuzz Face

BC108BというNPNシリコントランジスタを使ったFuzz Faceのご紹介です。BC108BのhFEは200〜450と低めです。このことからか、2SC1815とは違った優しい歪み方になります。

ゲルマニウムトランジスタのようなパッケージですが、BC108はシリコントランジスタです。70年代のジミ・ヘンドリックスはBC108Cで作られたFuzz Faceを使っていたという情報もありました。BC108CだとhFEが420〜800ですので、BC108Bよりも激しく歪むのかなと想像されます。

BC108のピン配置

BC108のピン配置は下図のとおりです。2SC1815とは並びが違いますので注意します。

BC108のピン配置
BC108のピン配置

回路図

2SC1815のFuzz Face回路をBC108へ置き換えた回路図です。抵抗やコンデンサなどの定数は変わりありません。

Fuzz Face(BC108版)回路図
Fuzz Face(BC108版)回路図

番号 部品 個数 備考
C1 2.2uF 積層セラミックコンデンサ 1個 225
C2 22uF 電解コンデンサ 1個 極性あり
C3 0.01uF フィルムコンデンサ 1個 103
R1 100kΩ カーボン抵抗 1個 茶黒黄金
R2 33kΩ カーボン抵抗 1個 橙橙橙金
R3 330Ω カーボン抵抗 1個 橙橙茶金
R4 8.2kΩ カーボン抵抗 1個 灰赤赤金
POT1 1kB 可変抵抗 1個
POT2 500kA 可変抵抗 1個
Q1、Q2BC108BNPNシリコントランジスタ2個

基板製作

2SC1815はピンがECBと並んでいるのに対し、BC108ではEBCの順になります。そのため、フットプリントを作り直す必要があります。次のようにパーツを配置してフットプリントを作成しました。

Fuzz Faceのフットプリント
Fuzz Faceのフットプリント

パーツの配置
パーツの配置

こちらが完成させたエフェクタモジュールです。

BC108Bで作るFuzz Face
BC108Bで作るFuzz Face

BC108Bで作るFuzz Face
BC108Bで作るFuzz Face

BC108Bで作るFuzz Face
BC108Bで作るFuzz Face

Fuzz Faceをエフェクタケースに収める(Version1.1)

BC108Bで作ったFuzz Faceクローン基板をエフェクタケースに収めてみました。パーツ選定や基板の配線の見直しを行ったところ、とても元気なサウンドになりました。

完成イメージ

エフェクタケースに収めるとこんな感じ♪ 文字はラベルシールで制作しました。

Fuzz Faceクローン
Fuzz Faceクローン

Fuzz Faceクローン
Fuzz Faceクローン

Fuzz Faceクローン
Fuzz Faceクローン

回路図(改良あり)

このFuzz Faceクローンでは少し改良点があります。

Fuzz Faceクローン version1.1の回路図
Fuzz Faceクローン version1.1の回路図

回路図をよく見ると、出力段のC3が0.01uFから0.1uFへ変更されております。この変更をやられている方はネット上でも多数、見かけられますよね。この効果はズバリ、低域を削られないようにするための改善です。

Fuzz Faceの後に入力インピーダンスが高い機材(ギターアンプとか)に繋ぐ場合には問題が起こらないのですが、入力インピーダンスの低い機材(録音機材とか)に繋ぐ場合は、C3が0.01uFだとかなり低域が削られてスカスカな音になってしまいます。Fuzz Face自体の出力インピーダンスが結構高いんでしょうね。Fuzzの音色自体は変わりませんから、この部分は0.1uFに変更した方が良いと判断しました。

実はコレ、間違って0.01uFを買うところだったんですが、0.1uFを買ってしまいまして、。気付かずに組み立てて、なんでこんなに音が太いんだろう!?と、。Version 1.1 凄いんじゃないのかしら、と思ったものの単純なカップリングコンデンサでよくアルアルな問題で落ち込みました(落ち込んではないか)。とはいえV1.0に比べ、V1.1の音は元気になったので改善されたことは間違いないです♪

基板制作

左が「Version1.1」で右が「初期のバージョン1.0」の基板です。

V1.0とV1.1の基板の比較
V1.0とV1.1の基板の比較

ご覧の通り、Version1.1では基板が少し大きめで、配線が太くなりました。また、パーツ同士の間隔にゆとりを設け、ちょっと分かりにくいかもですがホール同士の間隔もかなり広げております。

これはパーツ同士の干渉を防ぐ狙いでして、端子の間隔をある程度空けたほうが浮遊容量(コンデンサ成分)が減って音がスッキリするんじゃないのかと。見事に、本来の電子パーツが持つ元気なサウンドになりました。

初期バージョンの基板は廃盤ですm(_ _)m 低周波回路の場合、GNDベタをするとアンテナになってしまい良い結果になりませんので、ベタアースはやらない方が良い感じです。エッチングには時間がかかりますが。

パーツ

東信工業のコンデンサやタクマンの1/2Wカーボン抵抗など、電子部品もできるだけ質の良いものを使いました。

記号 部品 メーカー
Q1、 Q2 BC108B x 2 NPNシリコントランジスタ 不明
R1 100k 1/2Wカーボン抵抗 タクマン
R2 33k 1/2Wカーボン抵抗 タクマン
R3 330 1/2Wカーボン抵抗 タクマン
R4 8.2k 1/2Wカーボン抵抗 タクマン
C1 2.2u 電解コンデンサ 東信オーディオ
C2 22u 電解コンデンサ ニチコンMUSE
C3 0.1u(104) フィルムコンデンサ 指月電気製作所
POT1 1kB 可変抵抗ALPHA
POT2 500kA 可変抵抗ALPHA
基板 板厚:1.0mm、銅箔厚み:35μm/0μm CEM-3株式会社矢島製作所

パーツ
パーツ

はんだ付け後
はんだ付け後

はんだ付け後
はんだ付け後

はんだ付け後
はんだ付け後

図のように配線すればすぐに音出しできるように基板を制作してます。

音出しテスト配線例
音出しテスト配線例

ケース加工

HAMMONDの1590BBの塗装済みケースを使用しました。ボール盤を使ってアルミダイキャストに穴あけしました。

HAMMOND HAMMOND
HAMMOND HAMMOND

文字の印字

表面の文字はレーザープリンタでラベルシール制作して貼り付けました。300dpiでmmをpixelに変換して、SketchとGIMPを使って制作しました。

ラベル制作
ラベル制作

\私が使ってるのはこちらの製品/

ラベルシートをA6サイズ(A4を四分割)して、手差しでプリントしてます。ただしBlotherのこのプリンタ、紙が巻き込まれやすいので必ずラベルに設定して印刷してくださいね。

以前は2SC1815版の基板を入れてましたが、今回のFuzz BC108 Version1.1に入れ替えです♪(名残惜しいですが、2SC1815版には退去してもらうことになりました)

Fuzzの入れ替え
Fuzzの入れ替え

基板のはんだ付け

BELDEN8502と8501とKester44で電子部品をはんだ付けしました。フラックスは湿気など吸って音に悪影響ありそうですから、しっかり落とします。

フラックスを落とす
フラックスを落とす

フラックスを落とすにはサンハヤトのフラックスクリーナーがおすすめです。IPAでも落ちるっちゃー落ちますが、フラックスクリーナーよりは落ちずらいです。よくできてます、フラックスクリーナー♪

IPA vs フラックスクリーナー
IPA vs フラックスクリーナー

ケースとパーツを完全分離できる選定をすると、基板の交換やメンテナンスが楽になります。また、フラックスクリーナーはそこそこのお値段するので、ここぞ!、という時だけ使うようにして、普段はできるだけIPAで済ませる方向でフラックス除去するのが良いんじゃないかなと。

内部配線

Fuzz Faceクローン内部配線
Fuzz Faceクローン内部配線

線材は、BELDENの8501、8502あたりの太めのものを使ってます。Fuzz は外部ノイズを拾いやすいので、写真のように信号ラインにはシールドすると良いかと。だいぶ外部ノイズはおさまります。

プロミュージシャンの方に教えてもらった、トゥルーパスでも比較的フットスイッチノイズの少ない配線方法です(画像をクリックして拡大してください)。

エフェクタ内部配線例
エフェクタ内部配線例

仕上げ

スペーサーを使ってなんとか基板を固定。電池もギリギリ収納できました!

内部配線
内部配線

電池を収納
電池を収納

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▼ まずはんだごてですが、私は白光のこちらのはんだごてを使ってます。少し高価ですが、もっと早く買っておけば良かったと思えるほど良いです。立ち上がりが早くてはんだごてのオンオフのストレスがなくなり、温度も熱くなりすぎないのでパーツを痛めることも少なくなりました。これ一本で基板のはんだ付けから、ジャックなど大きめのパーツもはんだ付けできます♪もちろん鉛フリーも苦なくはんだ付けが可能です!

▼ エフェクタケースはタカチかHAMMONDのケースの二択ですね。HAMMONDの方がエッジが立っていて、洗練されたデザインなので好きです(電波の発信源にはなりそうですが笑)。Amazonなんかで売られているのはHAMMONDの正規品ではなくクローンですが、使ってみて問題はない感じでした。

オススメの自作エフェクタ本

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