無安定・双安定マルチバイブレータ回路
無安定マルチバイブレーター
無安定マルチバイブレーター(Astable Multivibrator)と呼ばれる発振回路でLEDの点灯を行ってみた。いわゆるLチカである。 ArduinoやRaspberry Piの動作確認のためにLチカをよくするが、ここではトランジスタ2つを使ってLEDを点滅させる。
回路図
こちらがその回路。2つのLEDが交互に点灯するというもの。トランジスタや電子回路の書籍でよく見かける回路である。 しかし、実際にこの回路を組んで実験してみたという人は意外と少ないのでは?私もその一人。回路図が交差していて何をやっているか分かりずらい回路だ。 しかし一度ブレッドボードで組んでみると、意外とシンプルな回路で面白かった。トランジスタのベース抵抗やコレクタ抵抗の感も身につくので、皆さんも一度実験してみることをおすすめする。
解説
回路の動作をざっと説明しよう。 この回路の電源をオンにした時、例えばLED2が点灯したとする。その時、右側のトランジスタはオンの状態になっているので、C2の右側の電位が下がり、R2の抵抗を介して電流が流れ、C2の充電が始まる。C2の左側の電位が高くなると、今度は左側のトランジスタがオンになる。その繰り返しにより、LEDが交互に点灯する仕組みとなっている。だから、コンデンサの容量や抵抗の値を変えると点滅の速度が変わる。 詳しい説明はこちらの書籍がわかりやすかったのでおすすめしておく。
発振周波数の計算
無安定マルチバイブレーターの発振発振周波数は次式で計算される。無安定と言っても周波数が不規則という意味ではない。
$$f=\frac{1}{0.69(C_1R_1+C_2R_2)}\tag{1}$$ここで\(C_1=C_2=C、R_1=R_2=R\)とすれば、デューティ比50%の次式の周波数で発振する。
$$f=\frac{1}{1.38CR}\tag{2}$$実際に、R2を100kΩの可変抵抗に変えて実験してみた。それぞれのLEDの点灯時間の比(デューティ比)が変わった。
ところで、回路図の4.7kΩの抵抗はLEDの電流を制御するものだ。9V電源なので高めの抵抗を選んだが、3V電源などで動かす場合は1kΩ程度にすれば良い。
双安定マルチバイブレータ
次に、無安定マルチバイブレータとよく似た「双安定マルチバイブレータ(Bistable multivibrator)」という回路を紹介する。
こちらのアニメ画像のように、スイッチを押すたびにLEDの点滅が切り替わる動作をする。つまり、0か1の状態を保持できるので、一時的な記憶装置と言える。実際メモリはこれらの回路を応用したものだ。 そんな、アナログとデジタルの狭間にあるような回路が双安定マルチバイブレータである。別名でフリップフロップとも呼ばれる。
回路図
今回実験した双安定マルチバイブレータ回路がこちら。あるエフェクターのフットスイッチ回路を参考に設計させてもらった。 もし、この回路を見て複雑だと感じたら、前回の無安定マルチバイブレータを先に見ると理解しやすい。
解説
無安定マルチバイブレータは勝手に発振してしまう回路だが、双安定マルチバイブレータでは発振を抑制し、その代わり外部のトリガによって2つのトランジスタのオンオフを入れ替えるようにできている。
2つの交差したトランジスタの回路がメインである双安定マルチバイブレータ回路だ。この回路の定数でうまく動作しない場合は、コンデンサC1〜C4の値を調整すると良い。特に、C1とC2が小さ過ぎても大き過ぎてもダメなようだ。
また、右上の回路がチャタリングを除去したトリガスイッチである。トリガスイッチの代わりに、トリガパルスを発生させる発振器に接続しても動作する。 回路図のOUTからは、LEDの状態と逆な状態のHighまたはLowの信号が得られる。 2回のトリガ信号を送ることで(2周期)、HighからLowへ切り替わる(1周期)ので、この回路を応用すると周波数を1/2にする分周回路として使うことができる。 エフェクターのダウンオクターバは、この仕組みを応用して作られている。
今回は、実験のため汎用トランジスタを使ったが、NAND回路を使ってもできるようだ。また、フリップフロップICも安く販売されているので、そのうちそれらも試してみたい。