はんだの種類で音が変わる!?自作のバッファーエフェクターで比較検証〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その6

はんだの種類で音が変わる!?自作のバッファーエフェクターで比較検証〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その6

巷で噂されている、はんだの種類で音が変わるのかどうなのか気になったので実験してみました。同じ電子部品を使ったバッファーエフェクターをはんだの種類だけ変えて制作し、ベース演奏を録音してみました。結論から申しますと、はんだの種類で音が結構変わります!音質を比較した動画もありますのでぜひご覧ください。

比較検証のためのシステム

はじめに、今回のはんだの種類によって音質を比較するために使ったシステムをご紹介します。

  1. シリーズ接続に改造したジャズべで演奏
  2. バッファーエフェクターを制作、はんだ付け
  3. ベース→バッファ→オーディオインターフェースで録音
  4. audacityで音量バランス調整

以上の流れになります。オーディオインタフェースはZOOMのU-44、ベースはPLAY TECHのジャズべを使用しました。

そして、比較するはんだがこちらです。ヴィンテージはんだで定番のKESTER44とDUTCH BOY(ヤニなし)、鉛の含有量がそれぞれ異なるHOZAN HS-344、HOZAN H-42-3703、HAKKO FS402-02です。

比較するはんだ
比較するはんだ

のちに日本スペリア社のSN100Cも加えましたが、この記事では紹介していません。下記の記事の後半で少し紹介してます。

ところで皆様にもお試しいただけるように、各種はんだ1mを詰め込んだお試しセットをメルカリで販売してます。ぜひこの機会にご自身でもはんだによる音の違いを実験なさってくださいね♪ 音の違い、結構わかります。

\はんだ6種!お試しセット/

▼ はんだ付けする回路は、下記のバッファ基板です。パーツは同じものを用意し、はんだの種類だけ変えて制作しました。

バッファーエフェクター
バッファーエフェクター

バッファーエフェクター
バッファーエフェクター

バッファー回路
バッファー回路

このバッファー回路は、オペアンプ4558を使用したボルテージフォロワーのシンプルなインピーダンス変換器です。入力インピーダンスは500kΩになるよう設計し、出力先機材は2kΩ以上のものを繋ぐことができます。基板は、以前にPCBWayさんで発注し、制作したものになります。

はんだの種類で音が変わるか検証動画

お待たせいたしました。さっそく、はんだによる音の違いを比較してみましょう。動画でご視聴いただけますので、ヘッドホンを着用して聴き比べてみてください♪

はんだによる音の違い、お分かりいただけましたでしょうか?前半の演奏の方が比較しやすかったはずです。

ちなみに私の使っているヘッドホンは、ゼンハイザーのHD 600オープン型です。インピーダンスが300Ωと鳴らしにくいので、LM386で作ったヘッドホンアンプを通して鳴らしてます。

以下、個人的な感想を述べておきます。

KESTER44

金属含有量
スズ60%
40%

非常にまとまりの良いサウンドです。オペアンプの聴き比べで感じた4558のようなまとまり感があります。ゆえに、4558を使った今回のバッファー回路にも相性のよいはんだと言えましょう。悪く言えばレンジが狭い感じでHiFiオーディオには向かないです。

DUTCH BOY(ヤニなし)

金属含有量
スズ?%
?%
?%

ヤニなしなので、黒缶ダッチボーイです。黒缶ダッチボーイですと、スズ50%、鉛50%という情報がありました。実際はさらに他の金属も配合されている気がします。

透き通る低音感がとても魅力です。今回比較した中では、個人的に一番フィットするはんだでした。

ただし扱いは注意が必要です。このはんだの煙を吸うと体調不良になることを聞きました。十分換気した上で、防毒マスクやハンダ吸引機などを併用することをおすすめします(確かに煙を吸うと胸が苦しくなる感じがします、、)。

さらにヤニなしのハンダですので、次のようなフラックスも必要です。パラフィン(ロウ)が主成分でペースト状になってます。爪楊枝などではんだ付けしたい部分に薄く塗布してから、ハンダを流し込みます。

またこのフラックスは、必ずはんだ付けしたらフラックスを除去しなければなりません。そのまま放っておくと浮遊容量成分となってしまい回路が発振したりします。

フラックスの除去には、サンハヤトのフラックスクリーナーが俄然おすすめです。綿棒などを併用してフラックスをキレイに取り除きます。IPAでも代用は可能ですが、フラックスクリーナーと比べると少し落ちにくいです。

私はどちらも所持しており、普段はIPAを使うようにしていて、ここぞというところではフラックスクリーナーを使うようにしてます。

▼ こちらのヤニベースのフラックスでもDUTCH BOYのはんだ付けは可能です。

ただし、銅を腐食させる可能性がありますので、はんだ付けした後はやはり残留フラックスを除去した方が無難です。

HOZAN HS-344

金属含有量
スズ99%
0.3%
0.7%

いわゆる鉛フリーのはんだです。スズが大半を占めてます。レンジは広い感じですが、ベースで使うと情報量が多すぎて低音感が物足りなく感じてしまいました。よく言えば軽い印象になり、響きがあるとも言えましょうか。まさにスズが鳴っているイメージを彷彿させます。

HOZAN H-42-3703

金属含有量
スズ50%
50%

とにかく重い音がします。どうも鉛の含有量が多いほど重いサウンドになる印象です。輝き感はなく鈍い印象ですが、ベースとの相性は悪くない感じです。どことなく鉛を手で持った時の感触が、音として表現されている気がして面白い発見でした。

HAKKO FS402-02

金属含有量
スズ60%
40%

Arduinoなどのデジタルな電子工作でよく使っていたはんだです。自作エフェクタなどのはんだ付けにも使ってました。しかし、ここまではんだの種類によって音が違うことが分かってしまうとこれから考えざるを得ませんね。

音色としてはペラペラした感じでちょっとうるさく、暴れる感じ。他のハンダに比べるてもまとまりが悪い印象でした。

日本スペリア社 SN100C

動画内ではご紹介できませんでしたが、日本スペリア社のSN100Cというはんだも使ってみました。

鉛フリーですが、スズのような鳴りはなく、元気で音質が良い印象です。

金属 含有量
スズ 100%
0.7%%
ニッケル 0.05%
ゲルマニウム ?%

こちらのはんだは、鉛だけでなく銀もフリーです。実は、銀の音を嫌う人は結構多いです。うるさすぎてガヤガヤするのでしょうか?

スズを中心として銅、ニッケル、ゲルマニウムが含まれているのが特徴です。このことにより、従来の鉛フリーはんだよりも性能が良くなるそうです。詳しくはこちらのページをご覧ください。

価格もなかなか低価格です。私の最近の電子工作では、このSN100Cを標準のはんだとして採用してます。

はんだの金属の性質(融点、導電率)

はんだによく使われる金属の性質をまとめました。気になるのは金属の融点や導電率ですが、導電率が良ければ音が良いというわけでもなさそうですね。

金属 元素記号 融点(°C) 導電率(%IACS)
スズ Sn 231.96 15.0
Pb 327.5 8.4
Ag 961.93 108.4
Cu 1084.5 100
Au 1064.43 73.4
白金 Pt 1769 16.3
ニッケル Ni 1455 25.2
ゲルマニウム Ge 937.4 半導体
ビスマス Bi 271.4 1.6

他にも亜鉛(Zn)やインジウム(In)もはんだの合金候補に挙げられます。

導電率の%IACSという単位は、銅の導電率を100%IACSとして基準にした国際単位です。

▼ 金属融点の参考サイト

▼ 導電率の参考サイト

共晶はんだの融点

共晶はんだとは、たとえばスズと鉛のように異種金属を混ぜ合わせたはんだになります。共晶は合金が凝固するときの凝固形態を表す意味だそうで、はんだを合金で作ることにより、金属が持つ融点より低くすることが可能となります。たとえばスズ単体では融点が232℃、鉛単体では328℃と融点が高いのですが、不思議なことにスズを63%、鉛を37%の割合で混ぜ合わせると融点が183℃まで低くなります。このことから初心者でも扱いやすいはんだが、スズ60%、鉛40%の割合で売られれているわけですね。

しかし昨今はRoHS指令により、有害な鉛を使わない鉛フリーはんだも普及してきてます。

これらの鉛フリーはんだは、融点が226℃と高めになります。普通のはんだごてだと溶かしにくかったり、逆に熱しすぎて部品を痛めてしまったりといったことが起こります。そこで温度管理できるはんだごてが便利です。HAKKOのFX-888Dを手に入れてからは、はんだ付けの作業効率が劇的にアップしました。立ち上がりの温度も一瞬で、ストレスになりません。

さて、実ははんだ選びに関しては、音質や融点、有毒性の問題だけでなく他にも重要な要素があります。剥がれ現象や食われ現象、濡れ性、酸化、強度などの性能の問題があるんです。下記の論文をご覧ください。

学術論文「共晶 はんだ」

はんだって奥が深いです〜♪皆さんも一度、はんだ沼ハマってみてはいかがでしょうか?(笑)

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この記事で紹介した商品
エフェクタ製作オススメ商品

エフェクタ製作に必要なオススメの工具をご紹介します。

▼ まずはんだごてですが、私は白光のこちらのはんだごてを使ってます。少し高価ですが、もっと早く買っておけば良かったと思えるほど良いです。立ち上がりが早くてはんだごてのオンオフのストレスがなくなり、温度も熱くなりすぎないのでパーツを痛めることも少なくなりました。これ一本で基板のはんだ付けから、ジャックなど大きめのパーツもはんだ付けできます♪もちろん鉛フリーも苦なくはんだ付けが可能です!

▼ エフェクタケースはタカチかHAMMONDのケースの二択ですね。HAMMONDの方がエッジが立っていて、洗練されたデザインなので好きです(電波の発信源にはなりそうですが笑)。Amazonなんかで売られているのはHAMMONDの正規品ではなくクローンですが、使ってみて問題はない感じでした。

オススメの自作エフェクタ本

エフェクターの電子工作でオススメな書籍を紹介します。どちらの書籍も大塚明先生が書いたもので大変良書です!残念ながら現在廃盤になってしまい品切れまたは高価格になっている可能性が高いですが、もし安く手に入るようなら買って損はないです!

  • 専門的知識がない方でも、文章が読みやすくおもしろい
  • エレキギターとエフェクターの歴史に詳しくなれる
  • 疑問だった電子部品の役割がわかってスッキリする

他にも自作エフェクターで参考になりそうなこれらの書籍を紹介します。

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