ヘルムホルツ共鳴とバスレフポート設計

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先日八丈島でキャンプをした時に、友人がAnkerのモバイルスピーカーを四阿(あずまや)の天井の柱に置いてピンク・フロイドの「Shine On You Crazy Diamond」を鳴らした瞬間に事件は始まった。

なんと音の良いことか...そしてこの小さなスピーカーから出ているとは思えないほどの低音のド迫力...私が没頭してきたAltecのスピーカー製作は一体なんだったのだろう...素直に現象を受け止め自分なりの知識で解釈しようとした。四阿の屋根がまさに振動の共鳴板の役割となって見事な結果を生んだのだろうか。スピーカーの位置を少しずらしたりすると随分と音の印象が変わるものだから面白い。
こうして私の中に低音への探究心が燃え上がる炎となっていったのだった。





ヘルムホルツ共鳴


八丈島から帰り東京生活に戻ってもこれらのことが頭の中を巡っていた。あのような小さなスピーカーで迫力のある低音が出て、なぜ私のスピーカーでは納得いくものにならないのかと。その時ふと、飲み干したワインボトルのボトル口に息を吹きかけてみた。

フー
ポーポー

ん?こんな小さなボトルでも低音って結構出るんだなぁ。一体この音の周波数はどのくらいのものだろうかと知りたくなった。自作オシレーターでさっそく調べてみると110Hzあたりの音が出てる感じだ。
さらに音を録音して周波数解析してみると112Hzあたりにピークがあることがわかった。間違いない、こんな小さなボトルでかなりの低音が出ている。だとしたらコントラバスのような楽器のあの大げさな大きさは一体なんだったのだろうかと思う。



この共鳴の原理はヘルムホルツ共鳴というもので、次の簡単な数式で共鳴周波数を計算することができる。

$$f_H = \frac{C}{2π}\sqrt{\frac{A}{VL}}$$

記号 意味
C 空気中の音速
A 口の面積
L ネックの長さ
V 胴体の容積

さっそく先ほどのワインボトルの寸法を測って計算してみた。すると129Hzとなった。それほど悪くない誤差範囲のように思える。


ちなみに空気中の音の速度は次の式で表されるように温度によって変化する。ただし、tは摂氏温度である。

$$ c = 331.5 + 0.6 t (m/sec)$$


なぜこのような共鳴が起こるのだろうか?

この共鳴の仕組みは次の通りだ。
まず、息を吹きかけるとネック部の空気が内部に押し下げられ、胴体の空気が圧縮される。胴体の空気が圧縮されると当然、圧縮された分の反発が起こりネックの空気を追い出そうとする。しかし圧縮された空気の分をぴったりと一度で押し戻すわけではなく、ネック部の空気に質量mがあるため慣性により多めに押し出すことになってしまう。するとまたその分の空気は元に戻ろうとして胴体の空気を圧縮するのだ。
まさにバネの単振動とおなじような運動をするのである。この運動による空気の疎密波が空気中を伝わって我々の耳に聞こえるというわけだ。


バスレフポート設計




話は自作スピーカーへ戻る。モバイルスピーカーのような小さなものでも十分低音が出るのに、なぜ私のスピーカーでは低音不足になっているのか納得がいかない。疑うべきはバスレフポートか?私の設計したエンクーロージャーはAltec 620、614を参考にしており、ポート穴の大きさはだいたいそれと同じような大きさにしたのだ。つまり特に数学的な根拠があってその大きさにしたわけでは無い。ポートの長さも板厚のみで特に無い。だからポートの長さを最適化することでもっと迫力のある低音が出るのではないかと思ったのだ。

そこで次にバスレフポートの設計方法を勉強してみることにした。大変参考になったので次の本を紹介しておきたい。ただしKindleのみの販売となっているのであしからず。



この本に書かれているポートの設計理論に従って、自作エンクロージャーのポート長さを算出してみることにした。

まずはスピーカーユニットに関するデータが必要だ。Altec 604-8Hはとても古いスピーカーユニットだ。なんとかネット情報を漁りまくって、こちらのサイトのパラメーターを参考にすることができた。

パラメーター 説明
Xmax (mm) 3.81
Re (ohms) 6.5
Vd (cm3) 314.6
fs (Hz) 28.1 ユニット単体の最低共振周波数
Qts 0.27 総合共振先鋭度
Qms 7.1
Qes 0.28
fb (Hz) 45.0 ポート共鳴周波数
Vb (l) 131 エンクロージャー容積
Sv(cm2) 90.0 ポート面積
r(cm) 5.35 ポート半径

エンクロージャーの体積151リットルから補強やスピーカーなど除いた体積Vbを131リットルとして計算することにした。すでに穴あけされたポート面積(Sv)は90cm2、また書籍で紹介されているポートは丸型だが、長方形ポートの面積と同等面積の円を仮定してその半径rを5.35cmとした。

この本によればポート長さL(cm)は次式で導きだされる。

$$L=\frac{30000 \cdot S_v}{f_b^2 \cdot V_b}-1.463r$$

Vb=131(l)、Sv=90(cm2)、r=5.35(cm)、fb=45(Hz)として上式に当てはめて計算すると、なんとポート長さLは2.35cmという結果になった。エンクロージャーの板厚が1.5cmなのでこの場合、ポート長さはいらないと言えよう。Altec 620、614を参考に決めたポートだったが、この大きさで問題ないと言える。バスレフの設計として大きく間違ってるということはないことが分かった。

こちらの記事に追記してあるが、結局その後、ネットワークを調整したことで低音不足の問題は改善されたのであった。


参考


* 自作スピーカー エンクロージャー設計法 マスターブック 自作スピーカーマスターブック
* ヘルムホルツ共鳴(Helmholtz Resonance)
* ALTEC 604-8H DUPLEX Loudspeaker
* ALTEC LIBRARY
* 604_1978_604-8H_Duplex_Speaker.pdf
* Thiele-Small Parameters for ALTEC LANSING Loudspeakers


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