スマホで使えるイヤホンマイクをECMで自作してみた
Android(Pixel 4a)で使えるイヤホンマイクをECM(エレクトレットコンデンサマイク)で自作してみました。実際に使ってみたところiPhoneでも問題なく認識され使えました。この記事ではその作り方をご紹介しますので、ぜひご参考になさってみてください。前半に3極端子、後半に4極端子の自作マイクを紹介します。
▼ ファンタム電源を使った高音質なピンマイクをつくりたい方は、こちらの記事をご覧ください。
はじめに
イヤホンジャックのマイクには、3極のものと4極のものがあります。この記事では前半に3極のタイプを紹介し、後半に4極のものを紹介していきます。
3極端子のマイクの場合はアダプタが必要です。また4極端子のイヤホンジャックには規格が2つあります。iPhoneやPixelで使えるのはCTIA規格です。一部のスマホでOMTP規格を採用してる場合があります。その場合は、この記事で紹介する配線では動作しませんのでご注意ください(といってもMICとGNDの配線を反転させるだけです)。後半で詳しくご説明します。
ところでECMカプセルには様々なモノが売られています。基本的にECMカプセルは安いのですが、ちょっと高いものもあります。こちらのWM-61Aは2つで1500円近くします。実は、WM-61Aとは以前にパナソニックが製造していたECMカプセルでして、音質に定評がありネット界隈でになっていました。しかし残念ながら製造が中止されてしまったため、市場になかなか出回らなくなってしまいました。そういうわけもあって少し割高になってるのだと思います。
秋月電子通商でWM-61A相当品なるものが販売されていましたので、この記事ではそのECMを使っています。WM-61Aの音質とどれほど違うのかはわかりませんが、他のECMと比べるとパワフルな印象がありました。また直径が5mm程度で、他のECMより約半分ほどの小ささです。
一般的なECMであれば、この記事の内容で動作しますのでいろいろ検討してみてください。
3極端子の自作マイク
3極端子の自作マイクをご紹介します。3極タイプの自作マイクはAndroidやパソコンのイヤホンジャックへ直接挿すことはできません。必ずスピーカーとマイクを分岐するアダプタが必要となります。ちなみに私が使っているのはこちらのアダプタです。
さて、3極端子のマイクジャックは、次のような構成になっています。
T (Tip) | R (Ring) | S (Sleeve) |
---|---|---|
MIC | MIC | GND |
モノラルケーブルですとMICとGNDがショートしてしまいますので、必ずステレオミニケーブルなどの3極ケーブルを使用してください。
AndroidなどのスマホではMICとして認識させるためにちょっとした工夫が必要になります。それは、MICとGNDの間に数kΩ(1kΩ〜8kΩ)程度の負荷がかかると外部マイクが認識するようです。詳しくはこちらの記事がとても参考になります。
さて、実際にMIC端子とGNDの間に6.8kΩの抵抗をつないでみたところ、手持ちのスマホでは外部マイクとして認識されました。その時、6.8kΩの両端に2V程度の電圧が掛かっていました。これはプラグインパワーと言って、外部マイクなどに電源を供給できる便利な仕組みです。本来はECMを動かすには別途電池が必要でしたが、プラグインパワーを利用すれば外部電源を必要とせずにECMを利用することが出来ます。
▲実際にこちらが製作した自作マイクの回路図です。6.8kΩの抵抗をECMと並列に挟んでますが無くても動作します。2.2kΩの抵抗はECMへの電源供給の抵抗になります。この抵抗の値を変えると、ECMの出力の大きさも変わります。音量が大きすぎると思ったときは、2.2kΩの抵抗を少し大きくしてみてください。
ECMと抵抗をハンダ付けし、ステレオミニのメスプラグの中に収納させました。ケーブルの穴がちょうどECMカプセルのサイズだったため、キレイに収まりました。
さて、自作マイクをスマホにつなげ、スマホの内蔵マイクと自作マイクの音質を比較してみました。スマホの内蔵マイクは高音がシャリシャリしていて不自然な感じです。また、スマホのボディの共振によるためでしょうか、水中や金属箱の中にいるような音質です。一方、自作マイクは非常にフラットな音質です。プロっぽい録音感といえば良いでしょうか?なかなか良い感じです。
ここまで読まれてどうも作るのに自信がないという方は、素直に製品のマイクを選びましょう。1000円程度で完成度の高い製品が買えますから、オススメです。
こちらの記事ではECM内部にまで触れて説明してますので、興味のある方はご参考になさってみてください。
4極端子の自作マイク
次に、スマホなどの4極端子の自作マイクの作り方をご紹介します。
はじめに説明しましたとおり、4極端子のイヤホンプラグは2つの規格があり注意が必要です。具体的には、CTIA規格とOMTP規格が混在している状態です。次の表を御覧ください。
規格 | T (Tip) | R (Ring) | R (Ring) | S(Sleeve) |
---|---|---|---|---|
CTIA | L | R | GND | MIC |
OMTP | L | R | MIC | GND |
このようにCTIA規格とOMTP規格ではMICとGNDの位置が逆になっています。よって自作マイクを作る場合は、使用する端末がどちらの規格かを調べる必要があります。私が使用しているPixel 4aはCTIA規格が採用されています。また、iPhoneのイヤフォンジャックまたは付属のイヤホンアダプタもCTIA規格になっています。今回はCTIA規格の自作マイクを制作していきます。
▲こちらが4極端子の自作マイクの回路図です。音量を大きくしたかったため1kΩの抵抗をECMに繋ぎました。TipsとRing1はオーディオ出力のLRに該当します。ここではオーディオ出力の必要はなかったので未接続にしてあります。
前半の3極端子の自作マイクよりもシンプルな構成になりました。アダプタの必要もないので、スマホなどで使うなら4極端子で作るほうが良いかもしれません。
さて、この回路を4極端子を使って製作してみました。100均で、使えそうな4極端子を見つけ、部品取りしました。ミニマムなマイクにしたかったので、写真のようにECMを4極端子に直接半田付けしました。
あとは、壊れないようにホットボンドで固めてアルミテープでシールドしました。見た目はアレですが、ミニマムマイクの完成です。マイクの向きも簡単に変えることができます。
Pixcel 4aでは、1kΩの抵抗でも外部入力マイクとして認識され問題なさそうです。また、抵抗の値を小さくしたことで、Android内臓のマイクとほぼ同じ音量にできました。やはり内臓マイクよりも格段に外部マイクのほうが音質が良いですね。
ここまで紹介したプラグインパワーによる方法は、実はECMの性能を十分に発揮できません。さらに高みを目指して、ECMを本格的な高音質で使いたい場合は、ファンタム電源化してみましょう。驚くほど音質が向上します。こちらの記事で詳しく解説してますので、ぜひご参考になさってみてください。
また、マイクを外で使う場合は、風切り音対策が必要になります。ウィンドジャマーというモフモフをマイクに被せることで、驚くほど嫌な風のノイズを除去できますのでこちらの記事もご参考になさってみてください。