トランスを使ったリングモジュレータ【モジュラーエフェクタ制作】

 

トランスを使ったリングモジュレータ【モジュラーエフェクタ制作】
トランスを使ったリングモジュレータ【モジュラーエフェクタ制作】

サンスイの600ΩトランスST-71を使って、リングモジュレータのエフェクタを作ってみました。LFOを別途用意すれば、他に必要な部品はダイオードと抵抗のみです。無電源で動かすことができるパッシブリングモジュレータです。トレモロ音から金属音まで、自由自在に音を操ることができます。

つかうもの

山水のトランス、ST-71を使用しました。

ST-71は600Ω:600Ωです。ST-71は、回路の絶縁に使われたり、アンバランスをバランス変換させるために利用されます。

リングモジュレータの資料を漁っていたところ、海外サイトの回路図に600Ω:600Ωのトランスが使われていたのを発見しました。そこで、ST-71の2次側にセンタータップが付いてましたので、リングモジュレータに応用してみました。

リングモジュレータの回路図

Ring Modulator Schematic
Ring Modulator Schematic

今回自作したリングモジュレータの回路図がこちら。4つのダイオードがリング状になっていることからリングモジュレータと呼ばれるのでしょう。

AM変調
AM変調

リングモジュレータは、AM変調そのものです。つまりは、信号と信号の掛け算にすぎません。

CarriorにLFOなどの超低周波信号を入力すれば「トレモロ効果」が得られます。また、数百〜数キロヘルツの信号をかけ合わせれば、いわゆるリングモジュレータエフェクタの「摩訶不思議なサウンド」になります。AM変調のについては、こちらの記事にも書きました。

動作の仕組み

実は先ほどの回路ですが、D1とD2の「ダイオード2つだけ」でも立派にリングモジュレータの効果は得られます。Carriorの信号がプラスの時、D1とD2がオンになりINからの信号が出力されます。そして、Carriorの信号はセンタータップで打ち消されて出力には乗らないという仕組みです。

とは言え、実際にはCarriorの信号は少しだけ出力に混じってしまいます。ここらへんは、トランスのセンタータップの精度だったり、ダイオードのVfのバラつきだったりと色々な理由がありそうです。

Carriorの信号を打ち消すために、Carriorの信号の一部を反転させて出力とミックスさせている回路図を見かけたことがあります。Null回路と書いてありましたので、多分そうです。もし、Carrior信号を完全に打ち消したいなら、やってみる価値はあるかもしれません。

リングモジュレータのダイオードを入れ替えて実験
リングモジュレータのダイオードを入れ替えて実験

ダイオードの種類

さて、ダイオードはシリコンダイオードの1N4148を使いましたが、ゲルマニウムダイオードやショットキーバリアダイオードでも動作します。順方向電圧Vfが違うためか、変調のかかり具合が変わってきます。ダイオードを入れ替えて音を比較したところ、シリコンダイオードが一番しっくりきたのでそれにしました。

「パッシブ」リングモジュレータ

このリングモジュレータは、ご覧の通りトランス・ダイオード・可変抵抗のみで作られているため電源の必要がありません。つまり「パッシブ」リングモジュレータなのです。

もちろん、実際にはCarriro用の発振器が必要です。また、ギターなどのハイインピーダンス楽器を直接入力することはできませんから、入力にはプリアンプやバッファ回路も必要です。

入力段のアッテネータ

さて、一般的なオペアンプ出力ですと、600Ωの負荷は高すぎます。そのため、入力には可変抵抗のアッテネータを設けました。アッテネータの役割は、入力のインピーダンス変換によるオペアンプの保護と、音質や音量を調節することにあります。とくに、Carrior側のアッテネータは必須でした。最低4.7kΩ以上ないと、Carriorへ入力したLFOの発振が止まってしまいます。

記事に関するご質問などがあれば、お問い合わせ までご連絡ください。
エフェクタ製作オススメ商品

エフェクタ製作に必要なオススメの工具をご紹介します。

▼ ミュージシャンの方にお勧めされた白光のはんだごてを使ってます。少し高いと思われるかもしれませんが、もっと早く買っておけば良かったと思えるほど良いです。立ち上がりが早くてはんだごてのオンオフのストレスがなくなり、温度も熱くなりすぎないのでパーツを痛めることも少なくなりました。これ一本で基板のはんだ付けから、ジャックなど大きめのパーツもはんだ付けできます♪

▼ はんだで音が変わると言われるほどですので、ヴィンテージはんだから色々こだわる方もいらっしゃるかと思います。私はまだ研究しきれてませんので、とりあえず楽器、エフェクタのはんだ付けに定番のKESTER 44を使ってます。

▼ エフェクタケースはタカチかHAMMONDのケースになると思います。HAMMONDの方がエッジが立っていて、洗練されたデザインなので好きです(電波の発信源にはなりそうですが笑)。Amazonなんかで売られているのはHAMMONDの正規品ではなくクローンですが、使ってみて問題はない感じでした。

▼ ジャックやスイッチは故障しやすいので、少し高くてもそれなりのものを使ったほうが良いです。私が最近よく使っているのは、NEUTRIKのNMJ6HC-S、SWITCH CRAFTの12Aと12Bです。NMJ6HC-Sはサウンドハウスさんで安く手に入ります。12Aはプラグを抜くとスイッチがショートするタイプで、入力に使うと便利です。12Bはステレオなので電源スイッチと連動できます。

トゥルーバイパスでエフェクタ制作する場合は、フットスイッチをよく選んだ方が良いです。安物だとスイッチノイズが盛大にでます。どこのメーカーかは分からないのですが、端子が金メッキされているフットスイッチを選ぶとしっかりした作りなので安心できます。

オススメの自作エフェクタ本

エフェクターの電子工作でオススメな書籍を紹介します。どちらの書籍も大塚明先生が書いたもので大変良書だと思います。残念ながら現在廃盤になってしまい品切れまたは高価格になっている可能性が高いですが、もし安く手に入るようなら買っておいて損はないです!

  • 専門的知識がない方でも、文章が読みやすくおもしろい
  • エレキギターとエフェクターの歴史に詳しくなれる
  • 疑問だった電子部品の役割がわかってスッキリする

他にも自作エフェクターで参考になりそうなこれらの書籍を紹介しておきます。

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