擬似エンベロープを使ったコンプレッサー【エフェクタ製作】
前回、擬似エンベロープ発生器を使ってオートワウ効果を試したが、シンプルな回路にもかかわらず多彩な音色が得られてとても楽しかった。擬似エンベロープモジュールを他にも使うことができそうだと思い考えていたところ「そうだ、コンプレッサーを試してみよう!」とアイデアが浮かんだ。さっそく、コンプレッサーの巷の回路図を探してみると、なるほど、やはり擬似エンベロープのような回路を使って音量をコントロールしてらっしゃる。
そういうわけで、この記事ではコンプレッサー回路の実験の紹介をしていく。
コンプレッサーの役割
音響においてのコンプレッサーの役割をひとことで言えば「音量を均一にする」だろう。小さい音を持ち上げて、大きい音量を抑える。ベースギターのような弦によって音量差が大きい楽器だったり、弾き方(指引き・ピック・チョッパー)によって音量差が大きすぎてしまう場合にコンプレッサーが欠かせないのだ。
もちろんコンプレッサーに頼りきってしまうのは良くない。やはり演奏技術でできる限りカバーするのが大事と思う。
昔、エフェクターに疎かった頃「コンプレッサーを使うと音が太くなる」と聞き、Bossのコンプレッサーを買った覚えがある。初めてコンプレッサーを使った印象としては、無音時のサーっという雑音が気になったり、強く弾くと急に音が詰まったような感じでどうも好きになれなかった。その後、エフェクタとしてのコンプレッサーの出番はなくなっていく。
それでもレコーディングなんかでは、何かと必要とされるコンプレッサーである。
コンプレッサー回路
こちらが今回実験したコンプレッサーの回路図である。点線枠以外の部分は、前回の擬似エンベロープ回路そのものだ。擬似エンベロープ回路に入る信号が大きいと、トランジスタが音になり、トランジスタの抵抗値が下がる。また、信号が小さいとトランジスタへ電流がほとんど流れないために、トランジスタの抵抗値が上がるようになっている。
さて、ここで点線枠の回路はいわゆる非反転増幅回路に他ならない。トランジスタは非反転増幅回路のフィードバック抵抗の役割をになっている。よって、入力が小さければフィードバック抵抗は大きくなり、結果として非反転増幅回路の増幅率が大きくなる。入力が大きければその逆になる。よって、この回路がコンプレッサーの働きをするのがお分かりだろう。ちなみに、デュアルオペアンプの1つが余ったのでバイアスをバッファ回路で作っている。
前回の擬似エンベロープ回路をそのまま流用しているので少し冗長な回路かもしれないが、モジュール分けによる恩恵は計り知れない。
擬似エンベロープの詳しい内容はこちらの記事を参考にしてほしい。
さて、この回路をブレッドボードで組んでベースを録音してみた。前半がコンプレッサー無しの演奏で、後半がありの演奏だ。違いがわかりにくいかもしれないが、コンプレッサーをかけた方が音の粒が揃っている印象。ミュート奏法のような小さい音が増幅され、チョッパーのような大きな音が抑えられている(ヘッドホンで聴くとわかりやすいかも)。
今回設計したコンプレッサー回路は、まだまだ改良の余地はあるが何かの参考になれば幸いである。