ブリッジドT型バンドパスフィルタ回路【エフェクタ製作】
この記事では、オペアンプによるブリッジドT型バンドパスフィルタ回路の実験をご紹介する。バンドパスフィルタ回路を作るには色々あるかと思うが、その中でもブリッジドT型が一番簡単だった。以前に作ったホワイトノイズに、バンドパスフィルタをかけて遊んでみたのでこの記事を参考に電子工作を楽しんでもらいたい。
ブリッジドT型バンドパスフィルタ回路図
こちらが、ブリッジドT型バンドパスフィルタの回路図である。ブリッジドT型のノッチフィルタをオペアンプを使って不帰還している構成となる。R2を可変することでフィルタの中心周波数を変えることができる。ちなみに中心周波数\(f\)は次の計算式で計算できる。
$$f=\frac{1}{2π\sqrt{\frac{R_1}{R2}}CR_2} \tag{1}$$
また、この回路は反転増幅回路の応用なので470kΩの2つの抵抗で増幅率が決まる。ここでは同じ値にしているので、増幅率は1倍である。
ブリッジドT型バンドパスフィルタの伝達関数
次に、ブリッジドT型バンドパスフィルタの伝達関数\(H(s)\)を示す。
$$H(s)=\frac{R_1R_2C^2s^2+(2R_2+R_1)Cs+1}{R_1R_2C^2s^2+2R_2Cs+1} \tag{2}$$
ノッチフィルタを不帰還しているため、ノッチフィルタの伝達関数\(G(s)\)の逆数を取れば\(H(s)\)が導き出される。
$$H(s)=\frac{1}{G(s)} \tag{3}$$
よって、巷のノッチフィルタの伝達関数を参考に、式2を導き出した。
さて、この伝達関数\(H(s)\)を元にPythonで周波数特性をシミュレーションしてみた。つぎのプログラムでは、\(R_1=470kΩ、R_2=400Ω、C=0.01μF\)としたときの周波数特性をプロットする。
from control.matlab import *
import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np
if __name__ == '__main__':
R1 = 470 * pow(10, 3) # kΩ
R2 = 400 # Ω
C = 0.01 * pow(10, -6) # μF
fc = 1/(2*np.pi*C*R1)*np.sqrt(R1/R2)
print(fc)
H = tf([R1*R2*pow(C, 2), (2*R2 + R1)*C, 1], [R1*R2*pow(C,2), 2*R2*C, 1]) # 伝達関数
print(H)
W = logspace(1, 5) # 対数スケールの配列
bode(H, W, Hz=True)
plt.show()
プログラムの実行結果がこちら。約1161Hzを中心にバンドパスフィルタがかかっている。
オペアンプで実践
次に、実際にオペアンプでTブリッジド型バンドパスフィルタ回路を組んで、ホワイトノイズをフィルタしてみた。
ホワイトノイズの作り方はこちらの記事を参考に。
フィルタ回路の定数は、先ほどのシミュレーションと同様\(R_1=470kΩ、R_2=400Ω、C=0.01μF\)とした。
音を録音して周波数特性を調べると図のようになった。1160Hzでピークがあるので、見事にシミュレーション結果と一致した!
\(R_2\)を可変抵抗にすればこのように風のような音も作ることができる。ちなみにこの音源は、\(R_2\)を約10kΩから10Ωまで変化させた音である。
バンドパスフィルタとホワイトノイズがあるだけでかなり遊べるので、ぜひ作ってみてはいかがだろうか。
また、可変抵抗をフットペダルのボリューム抵抗に変えればオリジナルワウペダルを作ることも可能なはず。
今回ブレッドボードで組んだバンドパスフィルタ回路をモジュール化してみた。中心周波数を変えることができるように、\(R_2\)は外部抵抗で制御できるようにしてある。
さて、このモジュールを使って打楽器の音色を作ったり、擬似エンベロープと組み合わせてオートワウ効果を実験してみた。こちらの記事もぜひ参考に。
エフェクタ製作に必要なオススメの工具をご紹介します。
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▼ はんだで音が変わると言われるほどですので、ヴィンテージはんだから色々こだわる方もいらっしゃるかと思います。私はまだ研究しきれてませんので、とりあえず楽器、エフェクタのはんだ付けに定番のKESTER 44を使ってます。
▼ エフェクタケースはタカチかHAMMONDのケースになると思います。HAMMONDの方がエッジが立っていて、洗練されたデザインなので好きです(電波の発信源にはなりそうですが笑)。Amazonなんかで売られているのはHAMMONDの正規品ではなくクローンですが、使ってみて問題はない感じでした。
▼ ジャックやスイッチは故障しやすいので、少し高くてもそれなりのものを使ったほうが良いです。私が最近よく使っているのは、NEUTRIKのNMJ6HC-S、SWITCH CRAFTの12Aと12Bです。NMJ6HC-Sはサウンドハウスさんで安く手に入ります。12Aはプラグを抜くとスイッチがショートするタイプで、入力に使うと便利です。12Bはステレオなので電源スイッチと連動できます。
トゥルーバイパスでエフェクタ制作する場合は、フットスイッチをよく選んだ方が良いです。安物だとスイッチノイズが盛大にでます。どこのメーカーかは分からないのですが、端子が金メッキされているフットスイッチを選ぶとしっかりした作りなので安心できます。
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